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3-點絳脣・寂寞深閨



  「點絳脣」  李清照

 寂寞深閨、
 柔腸一寸愁千縷。  (柔=愁)
 惜春春去、
 幾點催花雨。

 倚遍欄干、
 只是無情緒、
 人何處、
 連天衰草、  (衰草=芳草・芳樹)
 望斷歸來路。
      ( )内は異本
      (「閨思」と題するもある)

《和訓》
寂寞(ひとりさびし)深閨(わがへや)に、
柔腸(やさしきこころ) 一寸(すぼまり)て、愁ひの千縷(ちぢにみだれたる)
春を惜しめど春は去り、
幾点(しずくいくすじ)花催ほして雨のふる。

(あまね)くも欄干(おばしま)()りて、
只だ是れ 情緒無(むなし)きかぎりなり。
人 何処(いづく)にやある、
天に連なり、草衰へて、
帰り来たる路は望みても断たれたる。


《語釈》
・寂寞:寂しい、孤独な。静まりかえった、ひっそりとしたさま。
・深閨:奥深い婦人の部屋。婦人の私室。深窓。
・柔腸:優しい心(李清照の夫を思う心)。
・一寸:ごく小さい、ごく短い。わずか。
・千縷:千本の糸。極めて多数。千々の愁い。
・惜春:行く春(人生の春)を惜しむ。
・春去:春(青春)が過ぎ去る。
・幾點:何すじの(雨)。
・催花雨:日本では「菜花雨」ともいい、桜雨、桜が咲く頃に降る雨で、「春、早く咲けと花をせきたてるように降る雨。」花を咲かせる雨をいう。中国では「社翁雨・社雨」と同意で春分前後の雨をいうが、ここは春の終わり、花を散らす雨をさすのでしょう。
・倚遍欄干:高殿の手すりに身を寄せ、物思いに耽る。
・遍:あまねし。ここはずっとの意か。
・只是:ただ…だけ。もっぱら…するだけ。
・情緒:感情。意気込み。情動。
・人何處:夫は、今どこにいるのか。
・連天:天にまで連なる。地の果てまで、広がるさま。
・衰草:まばらになった草。衰:疎らになる。異本は「芳草」かおりのよい草。「春が過ぎ去って夏がくる時」を詠っているので「芳草」の方がふさわしく思われる。
・望斷:見通せない。
・歸來路:(夫の)帰ってくる道。

《詞意》
貴方と離れて寂しく独り奥の部屋に籠もり、
貴方にやさしい心で向かおうとしても千筋の愁いに乱れるばかり。
過ぎゆく春をいくら惜しんでも、春は過ぎていきます。
花を散らす雨は幾筋の私の涙でしょう。

いつまでも高殿の欄干に寄りかかってはいるけれど、
ただただ虚しいばかり。
貴方は今どこにいらっしゃるの?
天にまで連なる道は草が芳しいけれど、
どう眺めても帰ってくる貴方には辿り着きません。

《訳詩》
 ひとり淋しき我が部屋に、
 偲ぶ愁いの乱れ糸。
 春惜しまむも我が春去りぬ、
 花散る雨の降る中に。

 欄に身を寄せ眺めしが、
 思いのたけはただ虚し。
 いづくに君はあるやらむ、
 空に連なる草々に、
 帰らむ道の見えもせず。 

これは、結婚して間もなく政争に巻き込まれて夫と別居していた時の作品という。




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