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4-點絳脣・恥じらい



 「點絳脣」  李清照
  
 蹴罷鞦韆   (鞦韆=秋千)
 起來慵整纖纖手   (慵整=整頓)
 露濃花瘦
 薄汗輕衣透

 見有人來   (=見客入來・見客人來)
 襪鏟金釵溜  (鏟=剗・划)
 和羞走
 倚門回首
 卻把青梅嗅
   ( )内は異本
     此詞は《花草粹編》《續草堂詩餘》では無名氏詞。
     (「秋千」と題するもある) 

《和訓》
鞦韆(ふらここ)()()へ、
()ち来りて(ものう)げに纖纖(しなやか)な手にて整ふ。
露濃くして花の痩せたれば、
薄き汗は軽ろき衣を透かせり。

(きた)る有るを見るに、
(たび) (おさ)め、金の(かざし) (すべ)るも、
(はじら)ひし(まま)()ぐ。
門に()りて、(こうべ)を回らし、
(かえ)りて青梅を嗅ぐばかり。


《語釈》罷:(ブランコを蹴る=こぐのを)やめる。
・鞦韆(しゅうせん):ぶらんこ。ふらここ。「秋千」とも書く。
・起來:降り立って。立ち上がる。
・慵:ものうげに。
・纖纖手:ほっそりした白い手。若い女性の手の形容。
・花痩:(春の花はだんだんに散って)花が少なくなってきたこと。
・薄汗:うっすらと汗ばむこと。「花痩・薄汗」に晩春の暖かな気候が詠われる。
・輕衣透:うすぎぬの衣服に(汗が・肌が?)透けてきた。
・見有人來:人が来るのが見えた。「見客人來」「見客入來」の異本もある。
・襪鏟:靴も履かないで。・襪:たび。靴下。「襪(しとうず)足袋のもと」
・鏟:さらい取る。(剗:けずる。划:漕ぐ、さく)
・溜:抜け落ちる。抜け出す。滑る。滑るように動く。軒から落ちる雨水。
・和:・・のまま、・・ながら。「和羞」で羞じらいながら。
・走:にげる。
・倚門:門に寄り添って。門の陰に隠れて。
・回首:振り返る。
・卻:…してからその上で、あとで。かえって、反対に。やはり。
・把:ここは介詞。「把」は動作・行為の対象の目的語を動詞の前に繰り上げて、その目的語に処置を加える文を作る。「‥を」。英語の「前置詞」、日本語の「助詞」に相当するもののようである。

《鑑賞》 この作品は、少女期のものであろう。訪問者を婚約者の趙明誠として読むと面白い。彼女の恥ずかしがっている様とかつ夫を一目見たいと考える風情とが実に初々しい感情として歌われている。
逃げ出して、門のところに隠れて振り返えりながら、青梅を手に持ってその香を嗅ぐしぐさには乙女心がよく表わされている。少女の天真で浪漫的な可愛らしい中に幼い艶やかさを感じさせる情景で、無邪気で活発な女の子の照れ臭がる姿がなんともほほえましく描かれている。

《訳詩》
揺れるブランコこぎ終えて
物憂げ整ふ乱れ髪
露は濃くして花凋(しぼ)み
薄き衣(ころも)を透かす汗

君来たれるを見し時に
かざし抜くるも走り行き
はじらひしまま隠れ往ぬ
門(かど)に寄り添ひ垣間見(かいまみ)すれば
掌(て)に置く梅の青く香(かんば)し




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