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8-浣溪沙・閨情



  浣溪沙
     閨情   李清照

 髻子傷春慵更梳  (慵=懶)
 晩風庭院落梅初
 淡雲來往月疏疏

 玉鴨硼簾凌韃 (痢甦廖
 朱櫻斗帳掩流蘇 (斗=鬥)
 遺犀還解辟寒無 (遺=通 還=还
             辟=闢)
   
       ( )内は異本
       
《和訓》
髻子(もとどり)は春を傷みて更に(くしけづ)るに(ものう)く、
(よべ)の風ふきて庭院(なかにわ)に梅初めて落つ。
淡き雲の来往きて月は疏疏(よそよそ)し。

玉鴨の香炉は瑞腦を(しずか)にくゆらせ、
朱桜の斗帳(とばり)流蘇(ふさかざり)(おお)ふ。
遺犀の還た解くらむか、寒(ひら)く無きを。


《語釈》・閨情(この副題のあるものもある)「閨情」とは女性の情愛
・髻子ケイシ:もとどり(髪の毛をまとめて頭の上で束ねた所、またその髪)。たぶさ。もとゆい。子は助辞。・傷:悲しむ。
・痢О臓∨擦糧拭
・閑(里膨麺僉砲呂劼沺△靴鼎と訓。「閑」とするもあり。
・玉鴨硼痢Ф未枠称、鴨を彫刻してある香炉
・瑞腦:香の名、香材。
・朱桜:(朱利桜しうりさくら)・ははか・かにわざくら・ミヤマイヌザクラ。桜桃ならば「ゆすらうめ・さくらんぼ」。この瑞々しい色とつややかさは、若い女性の口もとに擬えられる。
・斗帳:とばり、たれぎぬ。 斗(マス)の覆いに似たるにより斗帳の字を用いる、カーテン。ここは床帳(ベッドのカーテン)。
・流蘇:五彩の絲を雑へて旌旗(セイキ。 はた、のぼり)、幕につけるふさ。「流蘇の帳」は、ふさの飾りが付いた幕(カーテン)。華麗で艶めかしいベッドを想起する。
・遺犀:「辟寒犀」 珍宝。「【犀角辟寒】 《開元天宝遺事》交趾(こうち=ベトナム)犀の角(つの)一株を進む。色金の如し。殿中に置くや、暖気人を襲う。上(唐玄宗)其の故を問う。使者対へて曰く「此れ寒を辟(はら)ふ犀なり」と。開元二年(七三○)冬至」による。
・還:かえる、また、めぐる。なお、依然として。
・辟:ひらく、追い払う。避にも通ずか。「通犀」「闢」とするもあり。 

《鑑賞》
この詞は安らいだ生活のあった結婚間も無くの頃か、易安居士と号し十年程過ごした青洲での作品であろう。

けだるくもゆったりした暖かな春の晩の情感が詠みこまれている。
先ずは、長恨歌の「芙蓉帳暖度春宵 春宵苦短日高起」が思い出される。

日本の歌の中で思い出されるのは次のようなもの。

うつり香のうすくなりゆくたき物の
   くゆる思ひにきえぬべきかな(後拾遺)清原元輔
風かよふ寝ざめの袖の花の香に
   かをるまくらの春の夜の夢(新古今)俊成女
夜の帳にささめきあまき星もあらむ
   下界の人ぞ鬢のほつるる (みだれ髪)晶子



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