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9-浣溪沙・芙蓉一笑

   浣溪沙  李清照
         
 繡幕芙蓉一笑開  (幕=面)
 斜偎寶鴨親香腮  (偎=飛)
 眼波才動被人猜

 一面風情深有韻
 半箋嬌恨寄幽懷
 月移花影約重來
        ( )内は異本
     (「閨情」と題するもある)

繡幕 芙蓉の一笑して開き、
斜めに偎(なじ)みて宝鴨の香腮(ほほ)に親し。
眼波才動するや人に猜(ねた)まるるほど。

一面の風情の有韻深くして、
半箋の嬌恨 幽懷に寄すれば、
月移ろひて花影に重来を約せり。


《語釈》
・繡幕(しゅうまく):刺繍のある閨房のとばり。たれぎぬ。 
・芙蓉(ふよう):ハスの花の異名。芙蓉はみずみずしい花のような美しい顔かたちの形容でもある。
・繡幕芙蓉:長恨歌の「芙蓉帳暖度春宵」〔芙蓉の帳(とばり)暖かにして春宵を度(わた)る=ハスの花の刺繍をしたカーテンが暖かく寝室を包む中で、二人は春の宵を過ごしている。〕によるか。芙蓉の花の模様のある閨房のとばり。帳の中の芙蓉のごとき顔。
・一笑:微笑む。少し笑う。(満足して)にこっと笑う。これも長恨歌に「廻眸一笑百媚生」〔眸(ひとみ)を廻らして一笑すれば百媚生ず=彼女が顔を廻らせて一たび微笑むと、そのなまめかしさは美しく化粧した皇帝の大勢の女官も顔色を失うほどであった〕がある。 
・斜初・F斜めに鬢に挿す。斜めに寄り添う。初・Fぴったり寄り添う。したしむ。なじむ。
・寶鴨(ほうおう):飛ぶ鴨の姿を宝石で象眼した髪飾り。
・香腮(こうさい):香るような美しい頬。
・眼波:まなざし。秋波に同じ、(美人の)流し目。すずしい目もと。
・才動:わずかに動かす。「一笑開」と呼応し、動きある女性美の描写。
・被人猜:人に妬まれるほどに彼女自身の美しさに内心満悦している様。
・一面風情:この風情。風雅の趣、男女間の情の意味ももつ。
・有韻:風趣、趣。
・半箋嬌恨:美しく艶めいて恨みを述ぶる手紙。
・寄幽懷:心の奥に響かせる。後半の二句は対句。
・約:約束する。誓う。 
・重來(ちょうらい):かさねて来る。再来。


《鑑賞》
前半の三句は人の心を動かすほどのあでやかで美しい自分の姿の大胆な描写であろう。
後半は、内なる世界を描くのであろうか、静かなたたずまいの中、月光に照らされた花影に寄り添う艶やかな二人の姿が夢幻の如くに顕れます。恋に落ちた女の気持ちなのでしょうか。
この匂いたつような句は彼女の生活がもっとも幸福な状況に向かっていた時期のものでしょうか。

《訳詩》
小簾(をす)の芙蓉に笑みとどめ
寄り添ふ頬に触る髪飾り
妬ましからむまなざし涼し

(みやび)の情(こころ)深くして
心に文を寄せしかば
契り知らるゝ花のかげ




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