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15-憶秦娥・秋再び

  憶秦娥    李清照

臨高閣
亂山平野煙光薄
煙光薄
棲鴉歸後
暮天聞角   (聞=吹・殘)

斷香殘香情懷惡  (殘香=殘酒)
西風催襯梧桐落
梧桐落
又還秋色  (秋色=愁也)
又還寂寞

      ( )内は異本

《和訓》   
高閣(たかどの)に臨めば
乱山 平野に 煙る光りは薄し。
煙る光の薄くして
(す)める鴉(からす)の帰りし後
暮れゆく天(そら)に 角(つのぶえ)を聞く。

香断ちて 香の残れど 情懐(ここち) 悪(あ)しく
西風の催襯(うなが)すや 梧桐(あおぎり)の落つ。
梧桐 落つれば、
又 秋色の還(めぐ)りきて
又 寂寞に還(かえ)りゆく。


《語釈》
・臨高閣:高殿から望み見る。遠くを望み、物思いに耽る。
・亂山:なだらかな山脈ではなくて、入り乱れているようにみえる群山。
・亂:無秩序な。
・煙光薄:霧が立ちこめおぼろに霞み薄ぼんやりしているさま。
・棲鴉:巣に戻るカラス。
・暮天:夕暮れの空。
・聞角:角笛の音を聞く。 ・角:角笛、主として軍事用。
・斷香:香木が燃え尽きて途絶える。
・殘香:香木が燃えた後に残っている香り。・「殘酒」とするものも多い。残り酒。(酒壷や盃に僅かに)残ってしまった酒。
・情懷:心情。心持ち。
・惡:わるい。興趣が湧かない。
・西風:秋風。
・催襯(さいしん):(落葉を)促すこと。
・催:急(せ)きたてる、促す。・襯:引き立たせる。際だたせる。
・梧桐落:アオギリやキリの葉が落ちる。
・「西風催襯梧桐落」は夫との死別・凋落を暗示するという。
・又:またもや。
・秋色:秋の景色。秋の気配。
・寂寞(せきばく・じゃくまく):ひっそりとしてさびしいさま。

《詩意》
高殿に上り、はるか遠くを眺めやりますと
遠く乱れ立つ山々やその元に広がる野が朧に霞むように見渡せます。
朧に霞む光の中を
カラスは山に帰っていき、
暮れなずむ空に角笛の音が響いています。

香は燃え尽き、残り香があるとはいえ、心地よくはありません。
秋風は時の移ろいを急かせ、大きな桐の葉をはらと舞い散らせます。
桐の葉が一葉二葉と舞い落ちると
秋はまた深まるばかりで、
ますます、ひとりひっそりとさびしさに沈みます。

《鑑賞》
これも、夫亡き後の再びの寂しい秋の訪れを詠う。
夫は、亡くなり、側に居なくなったが、秋だけはまたもや廻ってき、再び寂寞が訪れる。独りの生活になっても、寂しさだけはまた訪れてくるのだった。
・「少年易老学難成 一寸光陰不可軽 未覚池塘春草夢 階前梧葉已秋声」は余りに知られているが作者は不詳、明治の教科書編纂者により朱熹の作とされていた。
・夕暮の庭すさまじき秋風に桐の葉おちて村雨ぞふる(玉葉)永福門院
・桐一葉日当たりながら落ちにけり 虚子
 

《訳詩》
高きに上り眺むれば
山にも野にも薄光り
煙る光の薄くして
鳥はねぐらに帰り行き
暮れ行く空に笛響く

燃えし香りは残れるも
こころたゆたう秋の風
時移ろいて桐の葉の落つ
桐の葉散れば
廻れるは秋
寂しきは秋

(追加更新09/11/17)








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