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17-攤破浣溪沙・木犀花


  攤破浣溪沙    李清照

病起蕭蕭兩鬢華
臥看殘月上窗紗
豆蔻連梢煎熟水  (蔻=蒄)
莫分茶。

枕上詩書閑處好
門前風景雨來佳
終日向人多醞藉  (醞=蘊)
木犀花。

      ( )内は異本

《和訓》   

病ひ起くるに 蕭蕭として 兩鬢の華(しろ)
臥して看る殘月の 窗紗に上る。
豆蒄 梢に連なれるや 熟水に煎じて
分茶すること莫(な)し。

枕上(まくらべ)の詩書 閑に處(あり)て 好く
門前の風景 雨の来りて 佳し。
終日(ひねもす) 人に向かひて 醞藉の多きは
木犀の花。


《語釈》
・病起:病気になってから。病床より起きあがり。
・蕭蕭:ものさびしいさま。ここは、髪が抜け白髪の混じる寂しさ。
・兩鬢華:両鬢に白髪が混じっていること。華は、白髪(しらが)。
・臥看:臥したまま看る。寝たまま眺める。
・殘月:明け方まで空に残っている月。有明の月。のこんの月。
・窗紗(そうしゃ):窓のカーテン(紗=うすぎぬ)。
・上窗紗:窓のカーテン越しに月影がのぼる。
・豆蒄(とうこう):白豆蒄(はくずく)。ビャクズク(白叩)。多年生常緑草本。初夏に薄い黄色の花を著け、秋に実をつける。種子は急性胃炎の生薬になる。
・熟水:湯冷まし。
・莫:なかれ。できない。必要がない。漢文訓読では「…することまな」の形で、…するな。
・分茶:お茶の入れ方の一つ。ここは聞香杯に立ちのぼる香りを楽しむ品茶のこと。宋は隋唐の時代にあった「煮茶や煎茶」を伝承した上、新しい「点茶」も生まれ、分茶と斗(闘)茶が盛んであった。宋徽宗も点茶と分茶が得意だったという。

《語釈》
・枕上:枕元。枕辺。 
・詩書:詩の本。
・閑:長閑、静か。
・處:おる。いる。おく。ある。処す。
・雨來佳:雨が降って、一層味わいが出てきたこと。
・終日:ひねもす。朝から晩まで。一日中。ずっと。
・向人:人に向かう。モクセイの花が人に対して咲いていること。
・醞(うん):かもす。
・藉(しゃ・せき・じゃく):一面に広がる。
・蘊藉(うんしゃ):態度などがおだやかでゆったりしていること。
・木犀花:丹桂。モクセイ。桂花のこと。秋に、白あるいは黄色の花をつけ、芳香を放つ。

《詩意》
病になってより白髪も混じるようになりました。
寝たまま明け方の白い月をカーテン越しに眺めやっています。
豆を煎じた湯冷ましは、薬であって分茶のように優雅さを味わって飲むことはありません。

枕元に詩の本をおいて、静かに過ごす時間はなんと心地よいことでしょう。
門前の風景を眺めても、雨が降って、一層味わいが出てきました。
木犀の花が芳香を放ちおだやかに私と向かい合っています。

《鑑賞》
モクセイの花が咲いていることを人に対して咲くと暗に自身のこととをも匂わせて擬人化して、自身の姿を高雅なものとして詠っている。しかし、このおだやかな生活の良さを詠っているように見えて、実は、そうしたいと願っても、湧きあがってくる憂愁の如何ともし難い想いが詠われている。





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