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18-添字採桑子・芭蕉に降る雨


  添字採桑子    李清照

窗前誰種芭蕉樹  (誰種=種得)
陰滿中庭
陰滿中庭
葉葉心心
舒卷有餘情  (卷=展)(情=清)
傷心枕上三更雨
點滴霖霪  (霖霪=淒清) 
點滴霖霪  (霖霪=淒清)
愁損北人  (北=離)
不慣起來聽

      ( )内は異本
     (「芭蕉」と題するもある)

《和訓》   

窓前 誰が種へしや 芭蕉の樹
陰の満つ 中庭
陰満つる 中庭
葉葉 心心
(のば)し卷きて 余情有り。

傷心の枕上に 三更の雨ふる
点滴 霖霪(てんてき りんいん)
点滴 霖霪
愁損せる北人は
慣れざるに 起き来りて聴くばかり。


《語釈》
・窗前:窓の近く。窓の前。
・誰種:誰が植えたのか。 
・芭蕉樹:芭蕉の樹。
・陰滿:芭蕉の大きい葉で、庭がすっかり陰になっている。
・中庭:なかにわ。庭中。
・葉葉心心:葉と芯とそれぞれ。
・舒:伸びる、伸ばす。伸びやかな。
・傷心枕上:心痛めて、寝ている耳元に。
・傷心:心を悲しみで痛めること。・枕上:枕辺に。
・三更雨:真夜中に降る雨。・三更:子(ね)の刻。丙夜(へいや)。
・點滴(てん・てき):雨のしずくが、したたり落ちる。
・點:雨のしずく。・滴:しずく。したたり落ちる。
・霖霪(りん・いん):長雨がしとしとと降り続いてやまないさま。
・霖:長雨。霖雨(りんう)。
・霪:大雨。
・愁損:嘆き悲しみ、憂鬱(ゆううつ)で心が晴れない。悲しみが人の気持ちを傷つける。
・北人:北の人。南方の植物である芭蕉に慣れていない人として、南渡した作者自身をいう。
・不慣:(芭蕉に当たる雨音に)慣れていない。
・起來聽:起きあがって聴く。

《詞意》
南方の来てみますと、珍しい芭蕉の樹の大きな葉が庭一杯に影を落としています。
夜中になって、芭蕉の葉にあたる雨音の聞きなれない音に驚きながら、憂いは深まるばかりです。
〔江南へ避難し、夫を失い、祖父の地も家庭も亡くして流浪(福州・越州・杭州・終焉の地臨安と各地を転々)した南方での生活を詠っている。〕

《鑑賞》
「舒卷」と芭蕉の大きくゆったりとしている葉や丸く巻き込んでいる樹の様を珍しいものとして描写している。
また、「點滴霖霪」の繰り返しは、日本語で読んでも、點滴(てん・てき)霖霪(りん・いん)とそれぞれリズムをとって擬態語のような音楽的描写となっている。
聲聲慢では「到黄昏、點點滴滴」と詠われている。
・芭蕉の葉を打つ雨音が気になって寝られなかったという同様の芭蕉を詠じた詩に、「一夜不眠孤客耳、主人窗外有芭蕉。」(杜牧 雨)、 「深院鎖黄昏、陣陣芭蕉雨。」(欧陽修 生查子)、「 芭蕉葉上三更雨、人生只合随他去。」(劉辰翁 菩薩蛮)などがある。



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