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23-鷓鴣天・寒日蕭蕭

  鷓鴣天   李清照

寒日蕭蕭上鎖窗   (寒=盡)(鎖=瑣)
梧桐應恨夜來霜。
酒闌更喜團茶苦
夢斷偏宜瑞腦香。

秋已盡
日猶長
仲宣懷遠更悽涼。  (悽=淒)
不如隨分尊前醉
莫負東籬菊蕊黃。
  (黃=黄)
         ( )内は異本

《和訓》   

寒日蕭蕭(せうせう)として 鎖窓に上(のぼ)
梧桐 応(まさ)に夜来の霜を恨むべし。
酒蘭(た)けて更に団茶の苦きを喜び
夢断えて偏(ひとへ)に瑞脳(ずいのう)の香の宜(よろ)し。

秋已に尽き
日猶(な)ほ長く
仲宣(ちゅうせん)の遠きを懐かしむに 更に凄涼(せいりやう )たり。
分に随ひて尊前に酔ふに如(しか)ずして
東籬(とうり)の菊蕊(きくずい)の黄なるに負くる莫(なか)れ。


《語釈》
・寒日:寒々とした秋の終わりの太陽。
・蕭蕭:もの寂しく感じられるさま。雨や風の音などがもの寂しいさま。
・鎖窗:鍵をかけて、閉ざされた窓。
・瑣窗:枠が細かい連環模様の窓。
・梧桐(ごとう・ごどう):アオギリ。アオギリ科の落葉高木。
・應恨:おそらく恨んでいることだろう。
・夜來:夜になってからの。
・酒闌:酒が醒めかけてきて、酒がたけて。
・闌:たける。盛りをすぎる。末になる。「夢斷…」の句と対。
・更喜:もっと、うれしいのは。 
・團茶:茶の葉を蒸して固めたお茶。
・夢斷:夢が途切れて。 
・偏宜:特によい。ひとえによい。
・瑞腦香:龍脳(香料の一種)の香。 
・秋已盡:秋はとっくに終わって。
・日猶長:それでも秋の日はまだ長く感じられる。
・仲宣(ちゅうせん):王粲(おうさん)の字。建安七子の一人。辞賦に長ず。
・懷遠:高いところに登り、遠くを眺め、偲(しの)ぶこと。「登樓賦」による。
・更:その上。・悽涼:ぞっとするほどものさびしいさま。
・悽=淒=凄
・不如:…に及ばない。…にしかず。やはり…する方がよい。
・隨分:天命を聞き、随うこと。自由にする。随意。
・尊前醉:酒席で酔う。酒器を前にして酔う。尊=樽で、酒器。
・莫負:背くな。まけるな。裏切るな。・莫:…するなかれ。
・東籬:東のまがき。・籬:竹・柴などを粗く編んで作った垣。
・菊蕊黄:菊の花のズイの黄色に。

《補注》
・寒日:寒々としているのは、季節だけではなく、作者の心情も反映する。
・應恨・更喜:それぞれ、作者の心の動きを表す語。
・日猶長:本来、旧暦の秋は夜長であって、日は短くなっている。しかし、その短い秋の日でも、長く感じられるほどに、嘆きは深い。
・仲宣懷遠:王粲が後漢末の戦乱の哀しみを、楼に登って、遠く故郷の中原を見やって、懐かしみながらも荒廃を嘆き歌った「登樓賦」で、「登茲樓以四望兮、聊暇日以銷憂」と、故国を懐かしんだことによる。この心情は、李羮箸凌款陲任發△襦ここでは、王粲に仮託して自分の心情を述べている。
・酒闌、團茶苦:とともに、作者の精神を覚醒させるものとして詠われている。
・東籬:陶淵明の「飮酒 其五」の「結廬在人境、而無車馬喧。問君何能爾、心遠地自偏。采菊東籬下、悠然見南山。山氣日夕佳、飛鳥相與還。此中有眞意、欲辨已忘言。」から。「東籬」といえば「菊」、「菊」といえば「東籬」と広く詩詞に使われる。「酔花陰」でも「東籬把酒黄昏後」と詠っている。
・不如隨分尊前醉:自分自身に言い聞かせている言葉でもある。
・莫負東籬菊蕊黃:自ら励ます言葉。

《詞意》
寒々とした太陽が、閉ざされた窓にもの寂しい光を当てて昇っています。
おそらくアオギリの葉は夜になってから降りた霜を恨んでいることでしょう。
お酒が醒めかけてきた時には、朝の団茶のにがみが一層よろこばしく思えます。
夢から覚めて、ぼんやりした頭には龍脳の香もひとえによいものです。

秋がもう終わるというのに、それでも秋の日は嘆きのためかまだ長く感じられるます。
王粲が遠く故郷に思いを馳せた嘆きよりも、わたしの思いの方がもっと痛ましいと胸ふさがります。
ですから思いのままにやはりお酒を飲んで酔いに紛れるしかないのでしょう、
東の垣に咲く菊の花しべの黄色の美しいさに私も負けまいと。

《鑑賞》
秋の深まりのなかでいよいよ増す寂しさ詠われている。

・うつり行くまがきの菊も折々はなれこしころの秋をこふらし 後鳥羽院・水無瀬恋十五首歌合




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