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25-玉樓春・紅梅

  玉樓春
    紅梅    李清照

紅酥肯放瓊苞碎  (肯=敢)(苞=瑤)
探著南枝開遍末  (末=未)
不知醞藉幾多時  (醞=薀)(時=香)  
但見包藏無限意。

道人憔悴春窗底
悶損闌干愁不倚。
    (悶損=閑損・閑拍)(闌=欄)(干=杆)
要來小看便來休   (看=酌・着)
未必明朝風不起。

      ( )内は異本

《和訓》   
紅酥(こうそ) 肯(あへ)て放てり 瓊苞(けいほう)の碎(さい)。
南枝に探著す 遍(あまね)く開くや末だしや。
薀藉(うんしゃ) 幾多の時を知らず、
但だ包蔵の無限の意を見るばかり。

道人 春窓の底(もと)に憔悴し、
悶損して闌干には愁ひて倚らざりし。
要して小看に来たるも便(すなは)ち来たれば 休(いこ)ふ、
未だ必ずしも明朝 風起らざるなし。


《語釈》
・紅酥(こうそ):紅梅のこと。紅くて、柔らかくてもろいもの。
・酥:柔らかくてもろい。
・肯:自分の意志で…する、(要望を受け入れて)…する気になる。あえて。
・放:花が咲く。・瓊苞(けいほう):美しい玉のような蕾。
・苞:つと。
・碎:砕ける、ばらばらになる。蕾がほころびること。
・探著:さがしている。たずねる。・著:…している、…しつつある。
・南枝:南方に伸びた枝。日のよくあたる枝。
・開遍未:すっかり開いた。・遍:あまねくゆきわたる。
・醞藉(うんしゃ):醸し持っているもの。含蓄。ここでは、花の香りのこと。(・蘊藉:態度などがおだやかでゆったりしていること。)
・幾多時:どれほどの間だろうか。
・但見:ただ、…のように見受けられる。
・包藏:(ある感情を)隠し持つ、秘める。
・無限意:限りのない深い思い。
・「不知醞藉幾多時」「但見包藏無限意」は、対になるか。
・道人:道士。ここは、作者の自称。あるいは、与謝野晶子の「道を説く君」(柔肌の熱き血潮に触れもみでさびしからずや‥)と同じように、ともに楽しもうとしないつれない夫との解釈もある。
・憔悴:やつれる。
・窗底:窓の下。
・悶損:もだえ苦しむ。・悶:気がふさぐ、くさくさする。
・損:そこねる。
・闌干:てすり。欄干・愁不倚:愁いのあまり寄る気も起こらない。
・要:仮に。
・小看:見くびる、あなどる。ここは字の通り「ちょっと見」。
・便:…ならば、すなわち。・休:憩う。
・未必:…とは限らない,あるいは…でないかもしれない。不確実さをいう。

《詩意》
紅梅は今まさに、玉のような蕾をほころばせています。
南側の光のよく当たる枝を確かめてみます、花は咲き揃っているかどうかと。
醸し出される薫りは、どれだけもつものか分かりませんが、
ただ、限りなく深い想いを包み隠しているように見受けられます。

わたしは、窓辺のもとにいてやつれ果て、
愁いのあまり、手すりに寄る気も起こらずに、もだえ苦しんでいたのでした。
たとえ軽るい気持ちで来たとしても、香る花の下に憩うことになります、
明日には花を散らすような風が吹かないとは、限らないのですから。

《鑑賞》
彼女の詞には梅の花を詠ったものは多いが、この詞では、咲く梅に憩うと詠いながらも、明日の不安を「未必明朝風不起」と明日は悪いことが起こるかもしれない、明日はどうなるか分からない、とその想いを詠ったいる。

君ならで誰にか見せむ 梅の花 色をも香をも知る人ぞ知る(友則・古今集)



《訳詩》
道人をここでは、作者でなく、そっけない夫として読んでみます。

 紅梅白梅

蕾ほころび紅匂う
南の枝はどれほどか
あまたの香りかもしいず
果てなき想いかもし出ず

春べの窓にしおたれて
誘う杯知らぬふり
おばしまにさへ寄りもせず
明日の風に散るは花?




(追加更新09/9/30)


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