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27-一剪梅・べにばすの香

  一剪梅    李清照

紅藕香殘玉簟秋。
輕解羅裳
獨上蘭舟。
雲中誰寄錦書來
雁字回時
月滿西樓。

花自飄零水自流。
一種相思
兩處閑愁。
此情無計可消除
纔下眉頭    (纔=才)
卻上心頭。
   (卻=却・又)
      ( )内は異本
      (「別愁」「離別」と題するもある)

《和訓》   
紅藕(べにばす)の香を残せる玉簟(ぎょくてん)の秋。
軽く羅裳(うすも)を解きて
独り蘭舟に上る。
雲中 誰(たれ)ぞ錦書寄せ來たらむ
雁字 回る時
月 西楼に満つ。

花自(おのづか)ら飄零(へうれい)し 水自ら流る。
一種の相思
両処の閑愁。
此の情 消除すべき計(すべ)無く
(やうや)く眉頭より下りて
却って心頭に上る。


(訳訓)
 紅(あか)き藕(はちす)の香の残る涼やかなれる秋なれば、
 軽ろき羅裳(もすそ)の薄衣(うすぎぬ)(と)きて、
 我が身は独り 舟の上。
 雲の雁 誰(た)が文(ふみ)の来(きた)るを寄するや、
 雁連なりて 北より渡りきたる時
 月の光の 西の高殿に滿ちたりき。

 はらはらと花の 散りゆき、
 とうとうと川 緩らかに流れゆく。
 思い合い、偲びおうても、
 虚しくも 二つの心 隔つさびしさ。
 此の情(おもひ)消しさりぬべきすべも無く、
 やうやう 愁いの下(くつろぐ)も、
 却(かえ)りて 胸に上るのみ。


《語釈》
・紅藕:赤い蓮の花。藕:レンコン、ハスの花。
・香殘:まだ夏に咲いた蓮の花の香りが微かに残っている。
・玉簟秋:夏物の竹製の敷物が冷たく感じられる秋。 ・簟:たかむしろ。竹や葦の葉を編んで作ったむしろ。夏の調度。「玉」は美称。
・解:とく。ほどく。ぬぐ。
・羅裳:うすぎぬのもすそ。
・獨上:独りで舟にのる。 
・蘭舟:舟。蘭は美称。
・雲中:手紙を運ぶと喩えられる、雲中のガンを指す。 
・錦書:手紙。手紙の美称。ここは夫からのたより。 
・雁字:「人」字や「一」字に並ぶ雁の群。手紙を届ける「字」と結びつける。
・西楼:西の高殿、女性の部屋をいう。
・自:人の感情とは関係なく。おのずと。 
・飄零(ひょうれい):花びらや葉がひらひらと落ちること。おちぶれること。 
・一種相思:同一の愛情。おもいはひとつ。 
・閑:むなしく。 
・此情:この思い。 
・無計:すべがない。 
・無…可:ことができない。 
・消除:取り除く。なくす。
・纔:やっと。わずかに、たった。 
・眉頭:みけん。
・下眉頭:寄せていた眉間を拡げ、落ち着く。
・卻:かえって。…と雖も。ところが、けれども。
・心頭:胸の内。心の中。・上心頭:心に のぼす。気にかかる。

《詩意》
赤いハスの花の香りもすたれてきて、竹の敷物も冷たく感じられる秋とりました。
夏物のうすぎぬのもすそを脱ぎ改めて、
愛しい人もなしに、独りで舟にのります。
夫からの便りもないなか、雲の中から雁はいったい誰の手紙を届けてくれるのでしょうか、
字のように並んで飛ぶ雁の群が戻って来ます。そのとき、
月が、わたしのすむ西楼に一際大きく満ちて見えました。

花は、いつの間にか自然に散り、そのようにわたし(の容色)も、また色褪せてしまうのでしょうか。それに対して川の流れは変わることなく悠々と流れて、時は移り過ぎてゆきます。
おもいはひとつなのに、憂いは二つ、こうしてわかれているは辛いものです。
この愁いは、どうしても消し去ることができません。 
やっとのこと、寄せていた眉根を拡げて外見には落ち着いてまいりましたが、
今度はかえって、深く胸の奥にこの愁いは育っているのです。 

《鑑賞》この作品は、比較的初期の作品であろう。他の詩詞や諺・成語の影響が大きいという。
・花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふるながめし間に 小野小町


《訳詩》
 愁い深まる秋

蓮の微かな紅香る涼しい秋になりました
薄いもすそを風あおり
小舟に一人乗ってます
遥かの便りないままに
雁がねばかり帰り来て
月が照らすは西の町

花ははらはら散り過ぎて水はさらさら流れ行く
一つ思いを想い合う
なのに二つに隔てられ
愁いを消せるすべもなく
眉を顰めた苦しみも
今では胸の奥深く



《付録》



(追加更新09/9/30)

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