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35-〔歹帶〕人嬌・梅開有感

 殢人嬌
  後亭梅開有感    李清照  
玉瘦香濃
檀深雪散
今年恨探梅又晚。   (又=較)
江樓楚館
雲間水遠。
清晝永
憑欄翠帘低卷。

坐上客來
尊前酒滿      (前=中)
歌聲共水流雲斷。
南枝可插
更須頻剪      (更=便)
莫待西樓  (=莫待直西樓・莫直待西樓)
數聲羌管。
  
(此首一作無名氏詞、見《梅苑》卷九) 

《和訓》   
  後亭に梅開きて感ずること有り
玉痩せたれど、香の濃く
檀深くして、雪散りぬ
今年探梅の又晩(おそ)きを恨む。
江楼の楚館
雲間に水遠し。
(すが)しき昼永(ひなが)
欄に凭(もた)れて、翠簾(すいれん)を低く卷く。

坐上に客来たり
尊前に酒滿ちて
歌声と共に水流れ雲や断つる。
南枝挿すべし
更に須(すべから)く頻(しき)に剪(き)るべし
西楼に待つ莫れ
数声の羌の管(ふえ)を。

(此の一詞、一に無名氏の詞となす。《梅苑》の卷九に見ゆ) 

《語釈》・玉瘦:李清照の「臨江仙 梅」に同様の表現があり、そこでは「玉瘦檀輕」として使われている。ここは二句にまたがって「玉檀瘦深、香濃雪散」(玉檀の痩せしが深くして、香の濃くして雪散りぬ)の意。・玉檀:(玉は美称)。檀は栴檀(せんだん)。栴檀(白檀 びゃくだん)は発芽したばかりの二葉の頃から早くも香気を放つ。ここは「檀」を名木の意で用い梅の木をさす。
・江楼:川沿いの高殿。
・楚館:楚の地(湖北省から湖南省を含む地域)風の建物・店。「秦樓楚館」は妓院(遊女屋・遊郭の色茶屋)をさす。
・晝永(ひなが):春になって、昼間が長く感じられること。また、その時節。
・翠帘(簾):青緑色(エメラルドグリーン)のすだれ(カーテン)。
・坐上:江上、席上のような上の用法。 
・尊:中国古代の酒器。開いた口と膨らんだ胴、末広がりの台をもつ。
・南枝:南方に伸びた枝。日のよくあたる枝。ここは梅の花の咲いている枝。
・須:すべからく。すべくあらく(すべきであることの意)の約。下に「べし」をともなう。当然。
・頻:度重なること
・西樓(楼):城楼。城に作られた物見やぐら。
・羌(きよう):青海を中心に住む中国西北辺境の遊牧民。五胡の一。
・管:管楽器。笛。・羌管:羌の曲(胡歌)を奏でる羌笛。胡笳羌笛。西域から伝わった笛の音。 

《詩意》
梅の若葉は芽生えたばかり、
香り濃く葉を茂らせていますが、
まだ雪の散る中、
今年もまた梅を探るのが遅くなることを恨みます。
川辺の高殿に登ってみますと雲たれて水は遠く天に連なっています。
さわやかで気持ちがよい春の一日を
欄干(おばしま)にもたれ、青緑の簾を少し巻いて過ごします。

訪ね来る人があり、
盃にお酒を満たし、
歌を歌っておりますと、いつの間にか水の流れに雲も憂さもはれていきます。
さあ、梅の咲く枝を簪(かさし)にさしましょう。
もっと梅の枝を切って飾りましょう。
西の高殿に寂しい胡歌を奏でる笛の音が流れるのを待つことはありませんでしょう。
・「臨江仙 梅」と同趣の詞である。
(此詞は《花草粹編》巻七、《歴代詩餘》巻四十三、倶に李清照詞となす。《梅苑》巻九には作者姓名標さず。)



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