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40-滿庭芳・海角天涯に愁う


 滿庭芳    李清照

芳草池塘
儕庭院
晚晴寒透窗紗。
■■金鎖    (■■=玉鉤)
管是客來唦。  (唦=渺)
寂寞尊前席上
惟■■ 海角天涯。 (■■=愁■)
能留否?
酴醾落盡  (酴醾=酴醿)(落盡=已盡)(=酴酴醾已盡)
猶鰺■■。  (■■=梨花)

當年
曾勝賞
生香熏袖
活火分茶。
■■龍嬌馬  (■■=・この句5音)
流水輕車。
不怕風狂雨驟
恰才稱 煮酒殘花  (殘=箋)
如今也
不成懷抱
得似舊時那。 (那=哪)
  (■﹕原缺字)( )内は異本


《和訓》
芳草の池塘
緑陰の庭院
晩くに晴れて寒の窓紗を透す。
玉鉤の金鎖   
管は是れ客来たりて唦たり。  (唦=渺)
寂寞たる尊前の席上
惟だ愁ふ 海角天涯。 
能く留まるや否や?
酴醾落ち尽くして   
猶ほ頼るに梨花有り。  

当年
(かつ)て勝賞す
生香の袖を熏(くゆ)らせ
活火の茶を分かちたるを
(〔思い起こすは〕)龍なる嬌馬
流水の軽車。
風狂雨驟を怕(おそ)れず
(あた)かも才(わづか)に煮酒残花あるを稱す
如今(いま)
懐抱を成さず
旧時に似たるを得んや。
  


《語釈》
・池塘:池。池の堤。《朱熹の偶成詩に「未覺池塘春草夢」の句がある。・池塘春草夢:池の堤に春草の萌える頃、楽しくまどろんだはかない夢。》
・晚晴:夕方、雨が上がって空が晴れること。
・透:(光や液体が)通る、突き抜ける。
・窗紗:窓のカーテン。
・唦=渺:ひろし、はるかなり。ここは、かすかに遠し。
・寂寞:(じゃくまく、せきばく)ひっそりとしてさびしいさま。
・尊前:酒樽(さかだる)の前。樽前。酒盃を前にした。・尊前:身分の高い人の前を敬っていう語。おんまえ。
・海角天涯:地の果て。天の涯。(を放浪し続ける境涯)・海角:海の角。海の彼方。
・酴醾:トキンイバラ(ボタンイバラ)。バラ科の落葉低木。キイチゴの仲間だが花がバラに似て、枝にはとげがある。5月、八重咲の白い花をつける。)
・当年:当時、あの頃。
・曾:かつて、以前。
・勝賞:すぐれていることを讃える。すぐれているところを鑑賞する。
・生香:香気。
・活火:盛んにおこっている火。
・分茶:茶戯の一種。お茶の入れ方の一つ。聞香杯に立ちのぼる香りを楽しむ。
・龍嬌馬:龍の彫り物のある馬車。宮廷の馬車。・嬌:かわいがる。愛くるしい。
・流水輕車:流れ模様の漆塗りの軽やかな車。龍嬌馬とともに華やかだった都の象徴。
・風狂雨驟:風が吹き荒れ、雨が急に降り出す。
・怕:恐れる、心配する、案じる。
・恰才稱:かろうじてやっと言う(褒める)。
・煮酒:湯を入れた鍋に片口の酒を入れ蓋をする燗の仕方で温めた酒。酒の香りが高くなる。・あるいは煮物に使う酒。
・如今:(過去に対して)今、今どき、近ごろ。
・懷抱:胸に抱く。心で思う。ある思いや計画などを心の中に持つこと。また、その思いや計画。抱懐。
・得似:怎似(いかでか似たる)と同じで、どうして昔のままでありましょうの意。
・那:疑問の助字。

《詩意》
池の堤に春の草が萌え
中庭にも新緑の陰が濃くなってきました。
夕方、雨が上がって空が晴れると、寒さが窓のカーテンを抜けてきます。
そのカーテンの美しい留め金には金の鎖がついています。   
笛の音は訪れる人があって、かすかに遠くなりました。
ひっそりとさびしく 盃を前にして(あなた様の前で)
ただ地の果てを放浪し続ける境涯を愁いています。 
長く留まることができますか? できないの?
トキンイバラの花は落ち尽くしてしまいました。  
それでやはり頼るものといえば梨の花ばかり。  

ああ、あの頃
そのすばらしさを愛でて
香気に袖を熏(くゆ)らせ
盛んな火でお茶の入れてその香りを楽しんだことでした。
また更に思い起こすのは華やかな街を走る龍の彫り物のある馬車
流れ模様の漆塗りの軽やかな車。
風が吹き荒れ、雨が急に降り出すのを案じることはありません。
なんとかやっと燗酒(あるいは煮物用の酒)と花がまだ残っているのを讃えましょう。
近ごろは
何の夢ある思いも抱けなくなりました。
どうして昔のままの華やかな楽しい思いを抱き得ましょうか。



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