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47-長壽樂・南昌生日


 長壽樂
  南昌生日    李清照

微寒應候
望日邊六葉 階蓂初秀。
愛景欲掛扶桑 漏殘銀箭
杓回搖斗。
慶高閎此際 掌上一顆明珠剖。
有令容淑質 歸逢佳偶。
到如今 晝錦滿堂貴冑。

榮耀 文步紫禁
一一金章兌。
更值棠棣連陰 虎符熊軾
夾河分守。
況青雲咫尺 朝暮入承明後。
看彩衣爭獻 蘭羞玉酎。
祝千齡 借指松椿比壽。


《和訓》
  南昌の生れし日に
寒さ微(おとろ)えて候(季節)に応へ
日辺を望む六葉の
階の蓂(瑞草)初めて秀(ほいだ)す。
愛景の扶桑に掛からんと欲し
漏れ残る銀の箭(や)
杓斗回り搖ぐ。
高閎の此の際を慶し
掌上の一顆明珠を剖(ひら)く。
(かんばせ)の淑なる質有ら令(し)
佳偶に帰り逢はむ。
如今(いま)に到り
昼錦 貴冑堂に満つ。

(は)え耀やき
(はなやか)に紫禁を歩むは
一一の金章兌。
更に棠棣の陰に連なれるに値ひし
虎符に熊の軾
河を夾みて分け守る。
(ま)して青雲咫尺
朝に暮に承明に入りて後。
彩衣を看て争ひ獻ずるは
蘭羞玉酎。
千齡を祝ひ
寿に比ぶるに松椿を借り指す。


この詞は李清照の撰したものという説があり、風格の異なるところから李清照作ではないと疑われている。
題からすると、韓肖冑の母文氏の作か。あるいは李清照は韓肖冑に詩を送ったことがあるというから、詞を記し韓肖冑を讃えたのだろうか。

《語釈》
・南昌:韓肖冑(1075〜1150)のこと。 韓肖冑、字は似夫。相州安陽の人。韓治の子。蔭官により承務郎となり、開封府司録をつとめる。徽宗により同上舍出身を賜り、衛尉少卿に任ぜられる。給事中として遼に使いし、宣和元年(1119)、知相州となる。建炎二年(1128)、知江州に転じ、召されて祠部郎となり、左司にうつる。紹興二年(1132)、吏部侍郎に進み、翌年、端明殿学士・同簽書枢密院事に任ぜられる。通問使として金に使いする。のちに知温州・知紹興府をつとめる。死後、元穆と諡された。
・日辺:太陽のあたり。天上。また、遠い所。
・蓂:蓂莢(メイケフ)は堯の時生じたりといふ瑞草 メデタキクサ の名。月の一日より十五日まで日每に一莢を生じ十六日より晦日まで日每に一莢を落す、之によりて曆を作ったという。
・愛景欲掛扶桑:朝日が昇る。・愛景:日の光、冬の太陽。 ・扶桑:神話で東海の日の出る所にあるという神木。
・漏殘銀箭:夜が明けようとするとき。
・杓回搖斗:北斗星が東に回る。春が来る。春が来ようとしている。・杓:星の名、北斗星の第五より第七に至るをいう ・斗:南北に在る星宿 ホシノヤドリ の名。北斗星。
・高閎:名門。高い門。・閎:ひろくす。門。
・際:めぐり合わせ、運。時。
・明珠:透明で曇りのない玉。また、すぐれた人物、貴重な人物のたとえ。
・掌上明珠:《成》掌中の玉、愛嬢。《転》非常に大切にしているもの。
・容:顔、容貌、様子。・淑:善良な、しとやかな。
・歸:…に属する,…(の所有)に帰する
・佳偶:よきつれあい。琴瑟(きんしつ)相和した夫婦、幸せなカップル。
・晝錦:錦を飾る、偉くなって故郷に帰る。「富貴にして故郷に帰らざるは錦を衣て夜行くが如し」『史記・項羽本紀』による。・貴冑:貴族の子弟。貴族の末裔。
・堂:正殿。
・榮耀:大いに栄えて、はぶりのよいこと。
・文:あや、はなやか。礼儀作法などになれて優雅なる意。かざる、うわべをかざりつくろう。
・紫禁:〔「紫」は紫微垣(しびえん)で、天帝の座の意〕皇居。内裏。
・一一:一つ一つ、いちいち、一人一人。
・金章:黄金製の印章。(美しくすぐれた文章。)
・兌:みどり色の印綬〔官吏がその身分や地位を示すしるしとして天子から賜った、印およびそれを下げるための組み紐(ひも)〕共に高官をいう。
・值:相当する、値する、それだけのねうちがある。出会う、当たる。
・棠棣:常棣 ニハザクラ、 ニワウメの古名。好い兄弟の情の比喩。
・連陰:木のかげの茂りて連る。
・棠陰:周の宰相召公噎が甘棠樹の下で民の訴訟を聞き、公平に裁断したので、民が召公の徳を慕い甘棠の詩(「蔽芾甘棠、勿剪勿伐、召伯所茇」「詩経−召南」)を作り詠(うた)った故事による。善治者。
・虎符(こふ):虎の形をした銅製の割符(わりふ)で、片方を君主,片方を現地司令官が所持する。徴兵する際、その印として用いられた。
・軾(ひざつき):宮中の儀式などで、地面にひざまずく時に地上に敷く半畳ほどの敷物。布や薄縁(うすべり)で作る。あるいは熊の模られた軾(車の横木)。・熊軾:地方長官を指す。
・夾河分守:武帝に仕えた杜周は廷尉、執金吾(中尉)を歴任し、最終的には御史大夫まで昇り、天寿を全うした。二子を川を挟んで郡守とした。
・況:なおいっそう。さらに。
・青雲:青色の雲、晴れた高い空。地位・学徳などが高いこと。世を避けて送る超然とした生活、また、高尚な志操。
・咫尺(しせき):近い距離。「咫尺の間」のように使う。
・承明:承明殿。
・彩衣:種々の色で模様を施した衣。
・蘭羞:美味佳肴をいう。
・玉酎:貴重な酒。

《詩意》
  南昌が生れた日に
季節の移ろいに応えるように寒さが衰えて
日当たりのよいところの六葉の
庭の瑞草が初めて穂を見せる頃、
冬の太陽が神木にかかろうとし
星のきらめきを薄れさせ夜は明けようとして
北斗星は東に回り、春が来ようとしていた。
名門のこのめぐり合わせを祝って
掌の上に一粒の曇りのない玉(優れた人)をもたらした。
容貌も美しく徳のある善良な気質もあって
よきつれあいにめぐり逢い、
今に到り
偉くなって 貴族の子は正殿を満たしている。

栄え耀やき
はなやかに内裏を歩むのは
それぞれ金章兌の高官。
更に好い兄弟の情厚き善治者の
虎符熊軾の地方長官は
河を夾んて郡守として分け守る。
朝に暮に内裏に入りて後は
なおいっそう地位・学徳は高くに近づいている。
彩衣をつけた姿を見て争うように獻じたのは
美味しい食べ物に美味しい酒。
千齡を祝って
松椿にたとえて寿を述べる。



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