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1.正月初六日夜月


 憶秦娥   朱淑眞
  正月初六日夜月

彎彎曲、新年新月鉤寒玉。
鉤寒玉、鳳鞋兒小、翠眉兒蹙。

鬧蛾雪柳添妝束、燭龍火樹爭馳逐。
爭馳逐、元宵三五、不如初六。


《和訓》
  正月の初六日、夜の月
湾湾と曲りて、新年の新月は鉤なる寒玉。
鉤なる寒玉は、鳳の鞋小さくして、翠の眉の蹙(しじか)まる。

鬧蛾雪柳は妝に添へて束ねて、燭龍の火樹争ひて馳せ逐(お)ふ。
争ひて馳せ逐ふ、元宵三五も、初六に如かず。


《語釈》
・鉤(かぎ):新月のさま。
・寒玉:冷ややかに澄んだ美しい玉。竹や水、月などの形容。
・鳳鞋:おおとりの形の靴。弓なりの靴。
・翠眉:みどり色のつややかなまゆ。美人のまゆ。柳の葉の細く青々としていること。また、山が遠く青くかすんで見えること。
・蹙:ちぢまる。ちぢかむ。 ちぢこまる。なえる。
・鬧蛾:騒がしい蛾(が)。ここは宋代の婦人が元宵節につけた髪飾り(首飾り)。
・雪柳:バラ科の落葉低木。これも元宵節につけた金糸と絹紙で作る髪飾り(首飾り)。
・妝束:妝=粧、よそおい。 装束に通ずるか。
・燭龍:=燭陰。人面竜身の神で、1000里にもおよぶ赤い身体をしているという。自然の化身。風の神。息を吐くと風となり、大地を吹き抜ける。強く息を吐くと冬が訪れ、ゆっくりと吐くと夏になるという。
・火樹:灯火。篝火。
・燭龍火樹:孟浩然(689年-740年)の詩に「薊門看火樹、疑是燭龍燃。」の句がある。
・元宵:元宵節 春節から数えて15日目で、最初の満月の日。旧暦のお正月の締めくくりの日。 灯籠節とか上元節とも。その年の初めての満月の夜。元夕。元夜。元宵節には、豊年を祈願して、提灯や飾りを掲げるという。月夜の祭りなので、宵に外出する。
・初六:農暦正月6日。新春の五日間(「火」を点けず、「鋏み」に触れず、「包丁」にも触らない生活)を終えた旧正月6日目本当に新しい春を迎え、新しい年が始まる。
・不如: …に及ばない、劣る。やはり…方がよい。


《詞意》
ぐぐっと曲って、新年の新月は澄んだ美しい玉が細い鉤のよう。
その鉤のような寒玉は、鳳の細い弓なりの靴のようで、
また、みどり色のつややかな眉がちぢこまっているようでもあります。

元宵節には髪飾りの鬧蛾や雪柳を装束に合うように添へて束ねて、
燭龍のような赤く続く篝火を人々は争って走り回ります。
その争って走り回る15日の元宵節も、この6日の月の清清しい姿には及びません。



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