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14.點降唇 (風勁雲濃)

 
 點降唇     朱淑眞

風勁雲濃、暮寒無奈侵羅幕。
髻鬟斜掠、呵手梅妝薄。

少飲清歡、銀燭花頻落。
恁蕭索。
春工已覺、點破香梅萼。



《和訓》
風勁(つよ)く雲濃く、暮るるに寒くして羅幕を侵すをいかんせん。
髻鬟(もとどり)の斜めに掠(かす)め、手を呵(しか)りて梅妝の薄し。

少(いささ)か飲みて清(さや)に歓べば、銀燭の花頻(しき)りに落とせり。
恁(なん)と蕭索たり。
春の工(たくみ)已に覚め、香梅の萼(がく)を点破せん。


《語釈》
・勁:力強い、頑強な。
・無奈:=無可奈何。いかんせん。どうしようもない。いかんともするなし。
・羅幕(らまく):薄絹のカーテン。 ・羅:絽(ろ)、うす絹。・幕:カーテン。
・侵:侵(おか)す、侵入する。
・斜掠:髪を斜めに掻きあげる。・斜:ななめ。かたむく。・掠:かする、すれちがう。かすめとる。
・髻鬟(けいかん):もとどり。女性が頭上に束ねた髪。髪型。もとどりとみずら。まるく結い束ねたまげ髪。
・呵手:手に息を吹き掛ける。
・梅妝:梅花粧。梅の花びらをかたどった化粧。・薄:薄化粧する。
・清:静まり返った、静寂の。
・歡:喜ぶ、楽しむ。
・銀燭:白いロウソク。精製された蝋によって作られた明かり。
・燭花:蝋燭(ろうそく)の焔。灯火の芯(ろうそくなどの中央にある火をつける糸)。
・頻:しきりに、頻繁に。
・落:燭花(芯)を切り落とす。「燭花頻剪欲三更」と同趣。《補》参照。
・恁:おもふ。かくのごとし。そんなに、あんなに。どのよう。いかよう。
・蕭索:ものさびしいさま。蕭条。
・工:美しいものを作り出すわざ。「自然の―」「造化の―」の用例。意匠。趣向。
・点破:点じ破る。蕾を開く。
・萼:花のがく。


《詞意》
風が強く雲が濃くたれ、どうにも日暮れの寒さが薄絹のカーテンから染みいります。
髷の乱れた髪をかきあげ、手に息を吹きかけて軽くお化粧に手を入れます。

少しばかりお酒を飲み独り静かに楽しんで、銀の燭火の芯をしきりに切り落としています。
なんと静かで淋しいことでしょう。
春の工夫ははや覚めて、香り高く梅の蕾を開かせているでしょうか。


《補》
朱淑真の詩
 「秋夜」
 夜久無眠秋気清 (夜久うして眠るなく秋気清し
 燭花頻剪欲三更 (燭花頻に剪りて三更ならんと欲す
 鋪床涼満梧桐月 (鋪床に涼満ちて梧桐の月あり
 月在梧桐欠処明 (月は梧桐の欠けたる処に在りて明かなり

秋の夜長に眠れぬままにいますと、秋の気配がすがすがしく、
灯火の芯をしきりに切っているうちに、真夜中になってしまいました。
ベットには梧桐にかかる月のもと涼気がみなぎっています。
月が葉の隙間にみえて、いっそう明るく照らしています。


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