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19.菩薩蠻 (濕雲不渡溪橋冷)



 菩薩蠻    朱淑眞

濕雲不渡溪橋冷、娥寒初破東風影。
溪下水聲長、一枝和月香。

人憐花似舊、花不知人瘦。
獨自倚闌干、夜深花正寒。



《和訓》
湿雲渡らず溪橋冷たきも、娥寒初めて破れ東風の影あり。
渓下の水声長く、一枝月に和して香る。

人は花の旧に似るを憐れみ、花は人の痩せせたるを知らず。
独り闌干に倚るに、夜深かまりて花正に寒し。


《語釈》
・濕雲:春霞。・濕:ぬれた、湿った。
・溪:渓。谷川、小川。
・娥:美女。美しい。(・嫦娥:月世界に棲むといわれる仙女。月の異名。・娥影:月の異名、嫦娥の影。)
・破:わる、われる。ひらく。
・東風:春、東から吹く風。こち。
・影:存在を暗示するもの。兆候。
・和:なごむ。したしむ。合わせる。調和して一つになる。
・憐:いとおしむ、愛する。賞美する。めでる。惜しむ。
・瘦:痩せる。やつれる。憂愁のために身も心も疲れ果てたさまの比喩。李清照の「醉花陰」に「人比黄花痩(人は黄菊の花よりも痩せたり)」とある。
・獨自:一人で,自分だけで。
・倚:寄る。
・正:ちょうど、正に。動作の進行や状態の持続を表わす。


《詞意》
まだ湿った春霞がたなびくことなく小川にかかる橋は冷たいのですが、
凛とした寒さを破って初めて春風がたつ気配がします。
すると川の下の水音がのどかにひびき、一枝の梅が月に合わせるように香ります。

私は花が昔と同じように咲くのをいとおしんでいますが、
花は私が愁いに疲れ果てているのを知らずげに咲きます。
独り闌干に身を寄せていると、夜の深かまりに花はなんとも寒げです。


《補》
劉希夷(651〜678)の「代悲白頭翁」に 
 今年花落顏色改 (今年花落ちて顏色改まり)
 明年花開復誰在 (明年花開きて復た誰か在る)
  ‥
 年年歳歳花相似 (年年歳歳花相似たり)
 歳歳年年人不同 (歳歳年年人同じからず)


人はいさ心もしらずふるさとは花ぞむかしの香ににほひける 紀貫之



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