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22.念奴嬌 二首催雪(その二)



 念奴嬌      朱淑眞
  催雪(その二)

鵝毛細翦、是瓊珠密灑、一時堆積。
斜倚東風渾漫漫、頃刻也須盈尺。
玉作樓臺、鉛溶天地、不見遙岑碧。
佳人作戲、碎揉些子拋擲。

爭奈好景難留、風僝雨僽、打碎光凝色。
總有十分輕妙態、誰似舊時憐惜。
擔閣梁吟、寂寥楚舞、笑捏獅兒只。
梅花依舊、歲寒松竹三益。



《和訓》
鵝毛細く翦(き)れ、是れ瓊珠の密に灑(ま)きて、一時に堆積す。
斜めに東風倚りて渾漫漫、頃刻(しばらく)や須(すべから)く尺に盈(み)ちるべし。
玉作の楼台、鉛溶くる天地、遥かなる岑(みね)の碧(みどり)を見ず。
佳人戯れて、碎き揉み些子(いささか)抛擲(なげう)つ。

争奈(いかで)か好景留め難し、風僝(おこ)り雨僽(そぼふ)り、光凝らす色を打ち碎く。
総(すべ)て十分に軽妙の態有り、誰ぞ旧時に似て憐惜せん。
梁(はし)に担閣して吟じ、寂寥たる楚舞、また、獅兒只(しし)を笑ひ捏(こ)ぬ。
梅花旧に依り、歳寒くも松竹は三益なり。


《語釈》
・鵝毛:鵝鳥(がちよう)の羽毛。また、きわめて軽いもののたとえ。ここは雪の比喩。
・翦:剪。きる、たつ。風が寒さを帯びている様。
・瓊珠(けいしゅ):玉。 ・瓊:美しい玉(ぎよく)、たま。赤色の玉。・珠:玉。真珠。
・密:みつに、すき間もないほどにぎっしりと。ひそかに、人に知られないようにこっそりと。
・灑:まく、ばらまく。
・一時:一時に、ある時期に集中して起こるさま。
・堆積:積み重なる。
・斜倚:そっと立っている位置を斜めに移る。
・倚:もたれる、よりかかる。恃(たの)む、頼りとする。
・東風:春風。
・渾:渾然、いくつかのものがとけ合って区別できないさま。入り乱れるさま。自然のままの。
・漫漫:(時間、空間が)果てしなく広がるさま。
・頃刻:しばらくの時間。わずかの間。
・須:…すべきである,…しなければならない。
・盈:満ちる。
・玉:相手の身体・言行を美化する
・樓臺:高殿(たかどの)と台(うてな)。屋根のあるうてな。また、高い建物。
・玉作樓臺:雪積もるうてな。あるいは七宝楼台のことか。それなら、月、嫦娥の居所をいう。
・鉛:なまり。鉛色、鉛のような青みがかった灰色。
・岑:みね。 ・碧:あお、きよし、たま、みどり。
・作戯:ふざける。たわむれる。打ち解ける。くだけた態度をとる。
・碎:くだく、くだける。・揉:もむ、もめる。
・些子:少し、いくらか。
・抛擲:投げる。
・爭奈:どうして…になろうか。いかんせん。いかでか。
・僝:しめす、あらわす。そなえる。ののしる。
・僽:うれうるさま。(そぼふる。)
(・風僝雨僽:苦しみを経験し尽くすことの形容。憔悴する。)
・總:ともあれ。およそ、大体。総じて。
・軽妙:すっきりしていてうまみのある
・憐惜:あわれみおしむ。
・擔閣:担擱。滞在する、留まる。遅れる、長びく。
・梁:はり。橋。
・寂寥:ものさびしいさま。ひっそりしているさま。寂寞(せきばく)。せきりょう。
・楚舞:楚の国の舞。「呉歌楚舞」
・捏:こねる、つくねる。
・獅兒:獅子の子。獅子舞。通常2人で獅子に扮して、別の1人が刺繍入りの絹のまりを持って、獅子の舞踊をからかう。
・只:動物・鳥・虫を数える。
・三益:詩語で「良友」をさす。


《詞意》
雪は細かく冷たく、美しい玉がぎっしりとばらまかれるようにして、瞬く間に降り積もります。
春風はそっと引き下がり冬と春がとけ合って果てしなく広がるよう、しばらくは雪が高く積もるでしょう。
雪が高殿をお作りになり、空も地も鉛色に溶けて、遥かな青い嶺は見えません。
私は戯れに、雪を掬い丸めてちょっと投げ上げてみます。

なんとこの好い景色は留め難いことでしょう、風が吹き雨がそぼふり憔悴するうちに、美しい色の雪は打ち碎かれてしまいます。
ともあれ、それはそれでとてもすっきりしたもの、誰が以前のように憐み惜しむでしょう。
春になれば、橋に留まり詩を吟じ、ものさびしい楚の舞を見、獅子舞に笑いこけます。
梅花は昔のままに咲き、寒くはあっても松も竹も良い友なのです。


《参考》
・樓臺
   「春宵」 蘇東坡
  春宵一刻値千金
  花有清香月有陰
  歌管樓臺聲細細
  鞦韆院落夜沈沈

・楚舞
   楽府「烏棲曲」  李白
  姑蘇臺上烏棲時 (姑蘇の台上、烏棲む時)
  呉王宮裏酔西施 (呉王の宮裏に、西施を酔はしむ)
  呉歌楚舞歓未畢 (呉歌楚舞、歓び未だ畢らず)
  青山欲銜半邊日 (青山銜(ふく)まむと欲す、半辺の日)
  銀箭金壺漏水多 (銀箭金壷、漏水多し)
  起看秋月墜江波 (起って看る、秋月の江波に墜つるを)
  東方漸高奈楽何 (東方漸く高く、楽しみを奈何せん)


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