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25.月華清 梨花



25.月華清 梨花   朱淑眞

 月華清
  梨花

雪壓庭春、香浮花月、攬衣還怯單薄。
欹枕裴回、又聽一聲干鵲。
粉淚共宿雨闌干、清夢與寒雲寂寞。
除卻、是江梅曾許、詩人吟作。

長恨曉風漂泊、且莫遣香肌、瘦減如削。
深杏夭桃、端的為誰零落。
況天氣、妝點清明、對美景、不妨行樂。
拌著、向花時取、一杯獨酌。


※この詞、テキストは三行目が、
「粉淚共、宿雨闌干,清夢與、寒雲寂寞。」である。
ここでは「粉淚共宿、雨闌干,清夢與寒、雲寂寞。」と読んでいる。


《和訓》
雪は庭の春を圧し、香りて浮かぶ花と月、
衣を攬(と)りて還(なほ)単(ひとへ)の薄きに怯(おび)ゆ。
枕 欹(そばだ)て裴回(たもとほ)り、又聞くは一声の干鵲。
粉涙の共に宿して雨闌干、清夢寒さに与(くみ)し 雲の寂寞たり。
除却す、是れ江梅の曾(かつ)て詩人に吟じ作るを許せしを。

長く恨みて暁風の漂泊し、
且(か)つは香肌に遣(つかは)す莫(なか)れ、痩せ減りて削る如し。
深き杏 夭(わか)き桃、端的誰が為に零落せる。
況してや天気、清明に妝(よそほ)い点じ、美景に対し、行楽を妨げず。
拌著して、花に向かひ時に取りて、一杯独り酌(く)む。


《語釈》
・壓:動きを押さえる、静かにさせる。制圧する、鎮圧する。
・攬:とる。抱き寄せる。掌握する、独占する。
・還:なお,依然として
・怯:おびえる。ひるむ。恐れて気力が弱まる。気持ちがくじける。
・單:ひとへ。
・欹枕:枕をかたむける。まくらをそばだてる。寒さのために、蒲団に寝たままで聴く姿勢のこと。・欹:そばだてる。一方に傾ける。「遺愛寺鐘欹枕聴」(白居易) 
・裴回:=俳佪·徘徊。同じ場所を行ったり来たりする。行き廻る。もとおる。
・干鵲:水辺のカササギ。アオサギのことか。・干:たに(澗)みぎは(水涯)ほとり。
・闌干:涙のとめどなく流れるさま。・雨闌干:雨のように涙を流すさま。
・粉淚:おしろいと涙と
・與:与。与(くみ)する。味方する。
・寂寞:ひっそりとしてさびしいさま。
・長恨:長く忘れることのできない恨み。終生の恨み。一生の恨み。
・漂泊:あてもなくさまよい歩く。流れただよう。
・除卻:除く。・卻=却:…し去る。強調の助辞。滅却、忘却と同様の用法。
・曾:かつて、以前。(動作や状況が過去に属することを示す)
・許:許す、許可する。約束する。
・且莫(しょばく):しばらく……避けられたし。しばらく……するなかれ。・且:かつ。一方では。次々に。しばらく。しばし。同時に。また。その上。・莫:…なかれ。
・遣:派遣する、送り出す。にがす。(憂いなどを)追い散らす、発散する。
・瘦減:痩せ減る。痩せ細る。
・深:色が濃い。
・夭:(草木が)よく茂った、緑つややかな。・夭桃:美しく咲いた桃の花。若く美しい女性の形容。
・端的:はたして、果然。はっきりと。確定。明白。たちどころに。
・零落:おちぶれる。
・況:いわんや。まして、さらにいっそう。なおさら。
・清明:清明節。二十四節気の1つ。4月5日ごろ。
・妝點:粧点。よそおいかざる。化粧する、装う。
・行樂:たのしみをなす。遊び楽しむこと。
・拌著:拌着。酒をかき混ぜて。
・拌:攪拌(かくはん)する。かき混ぜる。わる。なげうつ。口論する。・着:…している、…しつつある。
・時:その時。時には。


《詞意》
雪は庭の春を圧するように降り積もり、香りのなかに花と月が浮かび上がります、
衣を上に纏ってもなほ単(ひとえ)の着物の薄さに気持ちも萎えます。
枕をそばだて寝返り打って、また水辺で一声高く啼く青鷺の声を聞きます。
白粉と涙とは一緒なって雨のように流れます、清らかな夢は寒さに溶けいり、雲はひっそりとさびしいかぎり。
以前詩人が川辺の梅を詠うほどの春の暖かさでしたが、それもこのところの寒さに退けられてしまいました。

忘れえぬ恨みを思わせる暁の風が冷たく流れます、
しばらくは香りある(梨の花の)肌に吹き付けないでください、削る如くに痩せ細ってしまいます。
色濃い杏の花や美しい桃の花(のような若い私)を、はたして誰が色褪せさせたのでしょう。
ましてやこの天気、清明節にお化粧を新たにし、きれいな景色を前に、楽しみを妨げるものはありません。
濁り酒をかき混ぜつつ、梨の花に向かい時に手に取って、ただ独り一杯の酒を酌みます。



  梨の花ほのけく白く月の夜に
     かげして散りぬ また一つ散る  立原道造



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