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  3. 祝英台近(春恨)



  祝英台近(春恨)  吳淑姬

粉痕銷,芳信斷,好夢又無據。
病酒無聊,欹枕聽春雨。
斷腸曲曲屏山,溫溫沉水,都是舊、看承人處。
久離阻。應念一點芳心,僚ッ隆許。
偷照菱花,清瘦自羞覷。
可堪梅子酸時,楊花飛絮,亂鶯鬧、催將春去。


《和訓》
  春の恨み
粉(おしろい)の痕(あと)銷(き)え、芳信断ち、好夢も又據(たのみ)無し。
酒(ささ)に病みて無聊、枕を欹てて春雨を聞く。
曲曲の屏山、温温の沈水、都(すべて)是れ旧、人に承(う)くる処を看(みまも)り断腸す。
久しく離れて阻(くる)しむ。応に一点の芳心を念(おも)ひて、僚イ隆許(いくばく)かを知る。
偸(ぬす)みて菱花を照らし、清瘦の羞(はじら)ひて覷(うかが)ふ。
梅子の酸時を堪ふべし、楊花絮を飛ばし、乱るる鶯の鬧(さわが)しく、将に春去るを催す。


《語釈》
・粉:おしろい。
・痕:痕跡(こんせき)、あと。
・銷:無効にする、取り消す。金属を溶かす。
・芳信:花のたより。花信。他人の手紙を敬っていう語。芳翰。
・據:拠り所依存する、頼みとする
・病酒:酒で体をこわすこと。酒にやられたこと。二日酔い。
・無聊:わだかまりがあって、心楽しまないこと。退屈なこと。気が晴れないこと。
・欹枕:枕をかたむける。まくらをそばだてる。・欹:そばだてる。一方に傾ける。
・斷腸:腸が断たれるほどに辛い。
・曲曲:まがりくねっているさま。こまごまといりくんでいるさま。
・屏:(息を)ひそめる。屏風(びようぶ)、衝立(ついたて)。さえぎる。
・溫溫:温温。ぬくぬく。暖かく心地良いさま。
・沉水:沈水香。沈水香は、東南アジアなどで採れるジンチョウゲ科の常緑高木の枯れ木や倒れた木に細菌がついて樹脂化して固まったもの。 水に入れると沈むことから沈水香と呼ばれる。
・都:すべて、みな。 《‘〜是’の形で》ほかならぬ…のせいで、…であればこそ。
・是:…である。
・承:うける。うけ頂く。
・處:すむ。とどむ。とどまる。おもむく。
・阻:へだたる。なやむ、くるしむ。
・應:当然…すべきだ。
・芳心:芳志。相手の親切な心遣い。気持ちを敬っていう語。親切を尽くすこと。
・僚ァ憂愁の思いが激しいこと。裏盍廖
・幾許:どのくらい。どれほど。
・偷:偸(とう)ぬすむ。こっそり。ごまかす。ひそかに。うすい。かりそめ。
・照:(鏡に)映す、映る。
・菱花:ヒシの花。ヒシ科の一年生水草。各地の沼や池に群生。夏、白色四弁の花が咲く。
・清瘦:やせこける。乏しい。
・羞:恥ずかしがる。
・覷:うかがう。じっとみる。
・堪:耐える。我慢する。こらえる。
・酸:酸っぱい。
・楊花:やなぎ、かはやなぎ(ねこやなぎ)の花。
・絮:柳絮(りゆうじよ)、柳絮(じよ)、柳の種子の綿毛。
・鬧:さわがしい。騒ぐ
・催:促す、急(せ)きたてる。
・將:はた。はたして。まさに。ちょうど今。


《詞意》
  春の恨み
おしろいのあと消えて、花のたよりはなく、よい夢も頼みにはなりません。
昨夜のお酒がまだ残っていて気も晴れず、枕を欹てて春の雨の音を聞いています。
枕もとを遮る屏風、心地よい香、全て昔のままに、あの方に戴いたと見ていますと心痛みます
久しく離れ離れなのを苦しむばかり。あの方の心遣いを想うと、愁いの深さのどれほどかが知られます。
鏡にそっと菱の花を映し、愁いに痩せた姿を恥じらいながらうかがうしかありません。
梅の実が青くつくこの時は忍ぶしかありません、柳は絮を飛ばし、乱れ啼く鶯の声がさわがしく、まさに春が去っていくのをせきたてています。



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