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  1.小重山(春愁)



  小重山(春愁) 吳淑姬

謝了荼蘼春事休。無多花片子,綴枝頭。
庭槐影碎被風揉。鶯雖老,聲尚帶嬌羞。
獨自倚妝樓。一川煙草浪,襯雲浮。
不如歸去下簾鉤。心兒小,難著許多愁。


《和訓》
荼蘼の謝(しぼ)みて春事休(おは)る。
花片子の多く無く、枝頭に綴(かざ)る。
庭の槐は影砕け風に揉まる。
鶯老ゆと雖も、声尚ほ嬌羞を帯ぶ。
独り妝楼に倚(よ)る。
一川煙り草浪ゆらぎ、襯雲浮ぶ。
帰り去りて簾の鉤(かぎ)を下ろすに如かず。
心小さくして、許多(あまた)の愁ひを著(あらは)し難し。


《語釈》
・荼蘼(せんび):トキンイバラ(頭巾薔薇・牡丹薔薇)。バラ科の落葉低木。花は白色、香気。朱淑真の鷓鴣天に「千鐘尚欲偕春醉、幸有荼蘼與海棠。」(千鐘の尚ほ偕(とも)に春に酔はんと欲せば、幸ひに荼蘼と海棠も有り。)の句がある。
・謝:(花や葉が)散る、しぼむ。・謝了:散ってしまった。
・春事:春の節日。春。
・花片子:花びらの一枚一枚。子は接尾辞。
・無多:多くない。少ない。
・綴:飾る。
・槐(ゑんじゆ):アカシア。マメ科の落葉高木。夏、枝頂に淡緑白色の花がつく。花が散ったあとは木の下が真っ白になる。
・被:…に…される。
・嬌羞:女性のなまめかしい恥じらい。
・獨自:自分ひとり。単独。
・倚:もたれる、よりかかる。ぼんやり待ちわびる姿をいう。
・妝樓(さうろう):化粧部屋。婦人の部屋。
・草浪:くさの波。草が風にゆらぐさまを波にたとえていう。
・襯雲:覆う雲。重なる雲。
・不如:…する方がよい。
・歸去:去り行く。故郷に帰る。(去り行くのは、春か、はたまた人か若さか。)
(・不如歸去:「去り行くがいい」(行かないで。帰って来てください。)ホトトギスは血を吐きながら、帛を裂くような高い声で悲しげに「不如歸去・ブールーグイチュー」と啼くという。)
・下簾鉤:簾の鉤をはずし簾を下ろす。
・兒:小さいものであることを示す接尾辞。
・著:著作する。明らかな、顕著な。
・許多:あまた。程度のはなはだしいさま。非常に。はなはだしく。


《詞意》
白い頭巾薔薇の花がしぼみ、春が終わろうとしています。
花びらもすくなくなって枝の先についているばかりです。
庭のアカシアの茂り始めた影が揺れ 風に揉まれています。
鶯は春を啼き続けて老いたといっても、声はまたまだなまめかしい恥じらいを帯びています。
独り部屋にぼんやりもたれて外を眺めますと、
川はもやり 草が波のようにゆらぎ、空覆う雲が浮んでいます。
春もまた去り行くしかないと 部屋にはいり簾を下ろしますが、
心細く、言葉にも出来ず 愁いに沈むばかりです。



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