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補1  怨王孫



  怨王孫  李清照
  (「春暮」と題するもある)
夢斷漏悄、愁濃酒惱。
寶枕生寒、翠屏向曉。
門外誰掃殘紅、夜來風。
玉簫聲斷人何處。
春又去、忍把歸期負。
此情此恨、此際擬托行雲、問東君。



《和訓》
夢断たれ漏るるは悄たるに、愁ひ濃くして酒の悩まし。
宝枕寒を生み、翠屏暁に向かふ。
門外誰ぞ残紅を掃きしや、夜来の風なるや。
玉簫の声断つ 人は何処(いづこ)ならむ。
春も又去りて、忍び把(と)るは帰期の負(たのみ)。
此の情け此の恨み、此の際(きは)み行く雲に擬(なぞら)へ托(たの)みて、東君に問ふ。


《語釈》
・漏:ある感情にもとづいて声・表情などが思わず出る。
・悄:静まりかえった、音のない。物悲しい、憂うつな。
・惱:気持ちがはれない。
・寶枕:玉の枕。唐の李賀《春懷引》に“寶枕垂雲選春夢,鈿合碧寒龍腦凍。”の句がある。
・翠屏:翡翠をはめ込んだ衝立。
・夜來:昨夜以来。
・玉簫:玉で飾られた簫(縦笛を十数本並べた楽器)。
・把:握る。見張る、番をする。
・歸期:還ってくる時期。
・負:たのむ。
・東君:日の異名。春の神。


《詞意》
春の夜の夢は途切れ、物悲しい想いばかりが溢れ出て、愁いは増すばかり。お酒でも気持ちは晴れることなく、宝玉の枕も寒々と冷たく、ヒスイの屏風に暁の色が映っています。庭に残る花びらを誰が掃き清めたのでしょう。昨夜来の風でしょうか。
笙の笛も聞こえなくなりました。あの人はいま何処にいらっしゃるのでしょう。
春はまた過ぎていきます。お帰りの日を恃みに忍び待つしかありませんが、この想いこの恨みこの窮まりを流れ行く雲にたのみまかせて、春の神に語りかけています。




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