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補2 怨王孫  帝裡春晩



 怨王孫 李清照
  (「春暮」と題するもある)
帝裡春晚、重門深院。
草儚前、暮天雁斷。
樓上遠信誰傳、恨綿綿。
多情自是多沾惹。
難拚舍、又是寒食也。
秋千巷陌、人靜皎月初斜、浸梨花。



《和訓》
帝裡、重門の深院に春晩く、
草緑なる階前、暮るる天に雁断たれ、
楼に上れど遠信は誰の伝ふるや、恨み綿綿たり。
多き情けの自づと是れ多く沾(ひ)じ惹きて、
拚舍(すてさ)るに難く、又是れ寒食のとき也。
秋千巷陌、人静かにして皎(しろ)き月初めて斜むきて、梨花に浸(ひた)れり。



《語釈》
・帝裡:帝裏。禁裏。宮殿。みやこ。京城開封。
・深院:奥庭。中庭。・院は、塀や建物で囲まれた中庭。中国の伝統的な御殿は、塀と門で幾重にも区切られた庭園がある。 
・階前:きざはしの前の。階段の前。庭先。
・遠信:遠方の手紙。消息。
・綿綿:途絶えることなく続くさま。
・沾惹:招引。激惹。引き付ける、誘う。 ・沾:しみる、ぬれる。・惹:ひく。誘いこむ。
・拚舍:捨て去る。
・寒食:寒食節。旧暦三月三日。翌日は春分から15日後の「清明節」。陽暦の4月3日から5日頃。仲春の最後の日。熟食節、禁煙節、冷節とも呼ばれる禁火の時期。火を使わず既に出来上がりの食べ物や、生のものしか食べないという祭日。介子推が己を貫き焼死した故事によるという。
・秋千:中庭にあるぶらんこ。太陽のよみがえりをねがう儀式として寒食節にブランコに乗ったという。ぶらんこは、春を感じさせるものであった。寒食節にはお墓参り、ピクニックが行なわれるが、その他に闘鶏子(卵のぶつけ合い)、蕩秋千(ブランコ遊び)、打毯(ポロのようなスポーツ)、拔河(綱引き)などの風習がある。
・巷陌:通り、横町。・「秋千巷陌」で「庭も街も辺り一帯」の意であろう。
・皎:白い。
・浸梨花:白居易の『長恨歌』に「玉容寂寞涙闌干,梨花一枝春帶雨。」とある。美しい女が涙を流すさま。
・[詞牌の怨王孫について=補1と2は同形であるが、全詞集(49首)の22(湖上風來波浩渺)とは異なる。他の詞人の作形を見ると補1・2の詩形を言うようである。]

《詞意》
御所の幾重もの門の奥、その中庭に春が暮れていこうとしています。
庭先の草は緑を増し、暮れなずむ空に北へ帰る雁ももう見えなくなりました。
高殿に登ってみますが、遠方からの便りは誰が伝えてくれるのでしょう。怨みは途絶えることなく続いているのです。
溢れ出る想いは更に多くの愁いを誘いますが、
それを捨て去るのも難しいうちに、季節は仲春もおわる寒食節を迎えています。
ブランコの揺れる庭も街も辺り一帯、昼の賑わいから一転静かになって、白い三日月が西の空に傾き、白い梨の花に心浸されるように涙を流しています。




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