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補3 浪淘沙 簾外五更風


 浪淘沙   李清照
  (「閨情」と題するもある)
簾外五更風、吹夢無蹤。
畫樓重上與誰同。
記得玉釵斜撥火、寶篆成空。
回首紫金峰、雨潤煙濃。   (煙=雲)
一江春水醉醒中。       (水=浪)
留得羅襟前日淚、彈與征鴻。

            ( )内は異本


《和訓》
簾の外に五更の風、吹きて夢の蹤(あと)無し。
画楼の重ねて上るは誰と同じくせむ。
記し得たり 玉釵の斜めに火を撥(か)きて、宝篆空しく成れるを。
首を回らすに紫金峰、雨に潤ひて煙濃く、
一江の春水は酔ひ醒めし中にあり。
留め得たる羅襟の前日の涙は、弾きて征(かへりゆ)く鴻(おほかり)に与えむ。



《語釈》
・五更:五更(午後7時から午前5時までを5等分する計時法)の五番目、五更(午前3時から5時頃)
・無蹤:形がない。
・畫樓:紅・緑や金色に塗られ、草・鳥・竜などの絵の描かれた楼。楼は妝樓、化粧部屋、婦人の部屋。閨閣。青楼。
・玉釵:玉のかんざし。(・玉:美称の接頭辞。)
・記得:おぼえている。
・撥火:火掻き、火をかき出す。
・寶篆:熏香の美稱。焚く時の煙が篆書(てんしよ)のようなことからいう。
・紫金峰:湖南省衡山県の西郊の奇峰。杜甫、韓愈も遊ぶという。紫金峰は安徽省の淮南市、福建省の上杭県、湖南省の炎陵県などこれ以外にも紫金山と称する山が多くある。
・江:湘江の流れ。
・羅襟:うすものの着物のえり。
・彈:はじく。


《詞意》
夜明け前御簾を揺るがして春の風が吹きすぎました。目覚めれば何の夢を見ていたことか、風に吹かれてしまったのでしょうか。
彩り鮮やかな館に私は誰と共にいればいいのでしょう。
思い出すのは灯火をかきたてて二人で、その香が燃え尽きるまで語り合っていたこと。
外に目をやりますと紫金峰の聳える奇峰は雨にけぶり雲も垂れ込め、
春の湘江の流れも酔いの醒めた目にぼんやり映るばかり。
昨夜の涙が春着の襟に留っています、あなたを偲び北へ帰る雁に弾き与えたいものです。




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