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補5 采桑子 晩來一陣風兼雨



補5 采桑子   李清照
  (「夏意」「新凉」と題するもある)
晚來一陣風兼雨、洗盡炎光。  (晚=曉)(陣=霎)
理罷笙簧、卻對菱花淡淡妝。
絳綃縷薄冰肌瑩、雪膩酥香。
笑語檀郎、今夜紗幮枕簟涼。  (幮=櫥) 

       (一説に康與之の作とする・全宋詞)


《和訓》
晩来の一陣の風は雨を兼ね、炎(あつ)き光を洗ひ尽くせり。
笙簧を理(をさ)め罷(や)めて、却つて菱花に対し淡淡と妝す。
(あか)き綃縷(いと)の薄く、氷の肌を瑩じ、雪は膩にして酥と香る。
笑ひ語れる檀郎、「今夜紗幮枕簟の涼し」と。



《語釈》
・陣:風や雨や拍手を数えるの数詞(‘一’か‘幾’にしか付かない)。(日本では「一陣の風」としてしか使わない。)
・理:ととのえる。処置する。さばく。整理する。
・罷:やめる、停止する。
・笙簧(しようこう):笙(しよう)の 簧(した)。楽器の発音源となる舌状の小薄片。リード。笛吹くこと。
・菱花(りょうか):ヒシの花。一年生水草。水面に浮き、夏、白色四弁の花を開く。
・淡淡:うすくほのかなさま。あっさりと好ましいさま。
・妝:化粧する、装う。
・絳(こう):濃い赤。
・綃縷(しょうる):生糸と糸。
・冰:氷。氷のように透き通る肌。後の「雪」も同じく、雪のような艶やかな白い肌をいう。
・瑩:瑩(やう)ず。瑩貝で絹をみがき、光沢を出す。
・膩(に):つるつる、すべすべしている。
・酥(そ):さくさくして柔らかい、砕けやすい。
・檀郎:檀越。檀那(だんな)。妻が夫をいう語。
・紗(さ):紗うすぎぬ。うすもの。紗織り。夏の衣服地。
・幮(ちゅう):とばり、かや。
・枕簟:まくらと夏物の竹製の敷物。枕にかぶせた夏物の竹製の敷物。・簟(てん):たかむしろ。細く割った竹をむしろのように編んだ夏季用の敷物。
 ※紗幮枕簟:蚊帳と夏枕。李清照の醉花陰には「玉枕紗廚 半夜涼初透」とあり、南歌子には「涼生枕簟」とある。・紗廚:紗のカーテン。


《詞意》
夕刻になって雨を伴った涼やかな風が吹き、昼の暑さをさっぱりと洗い拭ってくれました。
笛を吹くのを止め収め、むしろ水面のヒシの花に向かい薄化粧を施しましょう。
赤い絹の薄い衣が透きとおる肌をみがくように撫ぜ、雪の肌はすべすべとやわらかいく香ります。
だんな様が「今夜の寝所はことのほか涼しいようだ」と笑って語りかけます。


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