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補8 品令 零落殘紅



 品令   李清照
零落殘紅、恰渾似胭脂色。 
 (恰渾=此の二字無し・以臙脂色、似胭脂顏色)
一年春事、柳飛輕絮、筍添新竹。
寂寞幽閨、坐對小園嫩僉  (=閨・坐の二字無し)
登臨未足、悵遊子歸期促。
他年魂夢千里、猶到城陰溪曲。  (魂夢=夢魂)
應有凌波、時為故人留目。   (留=凝)
       (一説に曾紆の作)


《和訓》
零落して残れる紅は、
恰(あたか)も、胭脂の色に似て渾(にご)れり。
一年の春事、
柳は軽ろき絮を飛ばし、筍は新しき竹に添ふ。
寂寞として幽(かす)かなる閨(へや)に、
坐して小園の嫩(わか)き緑に対す。
登り臨むも未だ足らずして、
帰期促して遊子を悵(なげ)く。
他年 魂夢の千里ゆき、
猶ほ城陰の溪曲に到る。
応に凌波有りて、
時に故人と為(な)して目に留むべし。


《語釈》
・零落:花や葉が枯れ落ちる。また、落下する涙を指す。
・恰:ちょうど。まるで。
・渾:濁った、混濁した。
・胭脂:(ほお紅・口紅などの)化粧品のべに。臙脂。赤色。
・春事:春景色。春らしさ。
・絮:草木の種子についているわた毛。
・筍:たけのこ。
・寂寞:ひっそりとしてさびしいさま。
・幽:奥深い。ひっそりした。物寂しいさま。人けのないさま。
・閨:婦人の寝屋。
・嫩僉覆匹鵑蠅腓):新芽の緑。若緑。新緑。
・登臨:高い所に登って下を眺めわたす。
・悵:うれいなげく。
・遊子:旅人。家を離れて他郷にある人。
・歸期:還ってくる時期。
・他年:他の年。往年、以前。
・猶:やはり。たしかに。
・溪曲:谷川の湾曲した所。
・應:まさに‥‥べし。おそらく‥であろう。
・凌波(りょうは):急速に激しく流れる波。女子の足どりがしなやかなことの形容。美人の歩みが青い波に乗るように軽やかである比喩。または、美人の脚を指す。(「溪曲」と呼応するイメージであろう)。「凌」は迫る。威圧する。押しわけて進む。
・為:…とみなす。
・故人:古くからの知り合い。旧友。旧知。前妻或いは前夫の古称。ここは夫から遠く離れている自身を指す。
・時:時あたかも。その時。


《詞意》
悲しみの涙がこぼれるなか 散り残っている花は、
まるで頬に残る化粧の紅が涙に濁っているよう。
今まさに春の只中、
柳は軽ろやかに綿毛を飛ばし、筍は新しい竹に添い生えています。
ひっそりとさびしい人けない部屋に、
ひとり座って小さな庭の若々しい緑に向かっています。
あなたを偲んで高殿に登り遠く眺めやっても、心満たされることなく、
あなたのお帰りを促すしかなく 遠く他の地にあるあなたを愁うるばかり。
かつて 私の魂は夢に千里を飛び行き、
たしかにあなたのいらっしゃる街をめぐる川岸に到りました。
きっとあなたは女のしなやかに歩く姿を見出して、
まさになじみの私とみとめて目に留めたことでしょう。





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