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補10 鷓鴣天 「春閨」枝上流鶯和涙聞



 鷓鴣天   李清照
 春閨
枝上流鶯和淚聞、新啼痕間舊啼痕。
一春魚雁無消息、千裡關山勞夢魂。
 (雁=鳥)
無一語、對芳尊、安排腸斷到黃昏。
甫能炙得燈兒了、雨打梨花深閉門。

 (一說に秦觀作、無名氏作。)


《和訓》
枝上の流鶯 涙に和して聞く、新らたに啼く痕は旧に啼きし痕の間にあり。
一春の魚雁 消息無く、千裡の関山 夢魂を労す。
一語も無く、芳尊に対し、安(いづく)んぞ腸断を排せむや 黄昏に到る。
甫(まさ)に能(よ)く炙(あぶ)り得て灯児(ともし)了(をは)り、雨梨花を打ちて深く門を閉ざせり。


《語釈》
・流鶯:晩春にここかしこと飛び移って乱れ鳴くうぐひす。
・和:動作や比較の対象を示す。他のものととけ合った状態にする。声を合わせる。混ぜ合わせる。
・痕:痕跡(こんせき)、あと。
・一春:この春。春たけなわ。
・魚雁:(比喩表現で)手紙。書簡を送り届ける人。
・消息:知らせ。便り。
・千裡:千里。遠く離れていることにいう。
・關山:郷里。
・勞:はたらかせる。疲れさせる。(あるいは、いたわる。同情の気持ちをもってやさしく接する。)
・尊:樽と通用。酒器、杯。「對芳尊」で、酒を前に、呑みながら。
・安:(疑問・反語を表す語を下に伴って)どうして。なんで。
・排:しりぞける。押しのける。
・腸斷:はらわたが断れるような悲しみ。断腸の思い。
・甫:今しがた…したばかり、やっと。
・炙:あぶる。
・兒
:接尾辞(音を整える)。
・梨花:白い梨の花。ここの「梨花雨」は女の泣き続ける姿を形容する表現であろう。


《詞意》
枝のここかしこに啼く鶯の声を涙と共に聞いています。啼き終わる間に新たな声が重なり、涙のすじもまた新たに流れ付きます。
この春、誰も便りを届けてくれる人は居りません。ただ遠い故郷に思いを馳せて気に病むばかり。
語ることも無くひとり、お酒を飲んでも、どうしてこの悲しみを祓うことが出来ましょう。はやくも夕暮れを迎えました。
今しがた灯火に火をいれました。雨に打たれる梨の花のように泣きつづけ、私の部屋はひっそり閉ざされたままです。




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