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補12 新荷葉 薄露初零


 新荷葉    李清照
薄露初零、長宵共、永晝分停。 (晝=盡・書)
繞水樓臺、高聳萬丈蓬瀛。
芝蘭為壽、相輝映、簪笏盈庭。
花柔玉淨、捧觴別有娉婷。
鶴瘦松青、精神與、秋月爭明。
行文章、素馳日下聲名。
東山高蹈、雖卿相、不足為榮。
安石須起、要蘇天下蒼生。



《和訓》
薄き露初めて零(こぼ)れ、長き宵と永き昼とを共に分停す。
水を繞(ま)く楼台、高く聳ゆ万丈の蓬(よもぎ)の瀛(うみ)。
芝蘭寿を為し、相ひ輝き映えて、簪笏の庭に盈(み)つ。
花柔らかく玉淨(きよ)く、觴を捧げて別に娉婷(うるはし)き有り。
鶴痩せ松青く、精神と、秋月明を争ふ。
徳行の文章、素より日下に声名を馳す。
東山の高蹈、卿相と雖ども、栄為すに足らず。
安石須らく起ちて、天下の蒼生を蘇らすを要す。


《語釈》
・分停:平等に分ける。秋分の日。
・繞:巻く。めぐる。
・聳:そびえる。
・萬丈:万丈の高さ(深さ)の、まことに高い(深い)。
・蓬:よもぎ。蓬莱(ほうらい)は中国の神仙思想で説かれる想像上の仙境。東方の海上にあって、仙人が住む、不老不死の地と信じられた。蓬莱山。蓬莱島。よもぎがしま。
・瀛:大海。
・芝蘭:霊芝と蘭(ふじばかま)。めでたい草とかおりのよい草。すぐれたものや人にたとえる。ここは長寿を祝われる人。
・簪笏:かんざし・しゃく。祝いに来た高官・官女を指す。
・盈:満ちる。
・觴:酒盃。
・娉婷(へいてい):(婦人の姿や振舞いが)優雅な、美しい。美女。
・鶴瘦松青:仙鶴と常緑と共に長寿を祝う言葉。
・精神:神態、玉精神。神のような姿。女たちのすばらしい表情と態度を言う。
・徳行:修行によって得られる優れた状態や能力である徳と、それを実現する方法である行。功徳と行法。
・素:もとより。いうまでもなく。もちろん。
・馳:伝播する、広く伝わる。
・日下:首都。京都。
・聲名:よい評判。ほまれ。名声。
・高蹈:世俗の欲望を超越して、気位を高く保つ人。
・卿相:天子をたすけて政治をとる人々。公卿(くぎよう)。
・安石:謝安(しゃ あん320年 - 385年)中国東晋の政治家。東晋の危機を幾度と無く救った。詞はこの謝安の故事によっている。40歳になっても宮仕えせず、会稽の東山で気ままに暮らしていたので「東山高臥(とうざんこうが)」=世を離れ気ままに暮らす、という四字熟語がある。「悠悠自適」と近いが、大人物が風流な遊びを楽しむ、というニュアンスが強い。また「東山再起(退いた者が再び世に現れること。元の地位に復帰する。捲土重来)」という熟語も彼の故事による。
・須:…すべきである、…しなければならない
・蒼生:多くの人々。庶民。国民。あおひとぐさ。


《詞意》
初めて露がおりて、夜と昼とが等しく分けられる秋分の祝いの日を迎えています。
水に囲まれた楼台は、深い海の中に高く聳える不老不死の蓬莱島のようです。
優れたお方の長寿を祝い、輝くばかりの高官・官女が庭に集っています。
飾られる花や玉はしなやかに美しく、婦人たちは優雅なしぐさで盃を捧げ持っています。
鶴や松の長寿にあわせ、婦人たちの美と、秋の月が明るさを争っているようです。
貴方の徳を積んだ文章は、いうまでもなく天下に名声を馳せています。
世俗を超越しておられる方には、大臣の地位もそのほまれには十分ではありません。
どうぞ再び復帰なされて、世の人々を蘇らせてください。






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