宋詞鑑賞・李清照・朱淑真2020-10-23T00:27:15+09:00 下の●●目次●●からどうぞ。JUGEM宋詞についてhttp://kansi.sankouan.sub.jp/?eid=4453212009-03-26T22:13:58+09:002010-10-16T01:17:58Z2009-03-26T13:13:58Z
宋詞鑑賞・目次
(それぞれの目次にリンクしています)
・李清照全詞集(四九首)
・李清照詞補遺(一四首)
・追補 李清照漢詩(五首)
・朱淑真の詞(二五首)
・呉淑姫詞(五首)
...杉篁庵庵主宋詞について
宋詞鑑賞・目次
(それぞれの目次にリンクしています)
・李清照全詞集(四九首)
・李清照詞補遺(一四首)
・追補 李清照漢詩(五首)
・朱淑真の詞(二五首)
・呉淑姫詞(五首)
宋詞について
詞は宋代を代表する文学として、極めて重要な中国韻文の一ジャンルに位置しています。
「漢文・唐詩・宋詞・元曲」という言葉があります。これは、それぞれの時代を代表する文学のジャンルを示す言葉です。
では、詩と詞は何が違うのでしょう。
現代日本でもこの二つの言葉は日常的に使い分けています。
作詞作曲とか歌詞という語があります。一般に読むのが詩で、メロディが付いて歌われるのが詞という具合です。
詞は、宋の詞といわれますが、その作品は、晩唐五代両宋はもちろん、元明代にも続き、さらに清代には再び活況を呈して、近現代に及んでいます。
ですから詞は、歴代中国文人の創作活動や教養にとって、欠くべからざる分野として確固たる地歩を占めているのでした。
宋詞の詞風は大きく8種類(北宋5、南宋3)の類型に分けられ、そのなかで最も影響力があったのは豪放詞と婉約詞といわれます。豪放詞の代表的な詞人は蘇軾・辛棄疾で、また劉過・陳亮・劉克荘がいます。婉約詞の代表的な詞人は柳永・秦観・晏殊・李清照で、また欧陽脩・周邦彦・姜夔・晏幾道らがいます。
「詞(宋詞)」は、普通は「填詞」、或いは単に「詞」ともと呼びます。
その形を見てみますと、唐詩に比べ一句の文字数が一定でなく、長短不揃いであり、句数も色々。この多様で、複雑な形をしているのは、一つには、形式の上から、更には詠い込む対象・内容の違いから、また詞の社会的な地位(詩は科挙の課題であった)から来ています。また、初期には歌として歌われ、歌詞として発達してきたという側面もあり、曲調にあわせて、長短入り混じった句で出来ています。
詩の形式は五言と七言の絶句・律詩・排律で、その調べは十数種類ですが、それに対して宋詞の形式(詞調)では、長短句入り混じり、平仄、押韻の形式も数多く作られ、その種類は八百二十五調、千百八十余体、或いは千六百七十余体があると言われています。そしてそれら各形式(詞調)毎に、形式の題名=「詞牌」が冠せられています。詞牌とは本来は詞の題名ではなくて、形式名、音曲名と謂えるものです。
実際の詞を見てみると、詩とは全く違った趣を持っているのが解りますが、長短句の入り混じった複雑なリズム、平仄の韻律も近体詩に比べ格段に複雑・多様です。このように表現が極めて多彩で、それに伴い制約も極めて多いというわけで、日本人にはお手上げ状態となって、読んだり作ったりをあまりしないので、宋詞は高校までの漢文学習では現れません。
あまり親しみのない部分ですが、中国の人は、より現代語に近く、より繊細な感情を表している分、詞に親しみを感じているようです。
このブログで取り上げるのは宋代の女流詞人による詞です。
その代表的女流詩人で「第一女詞人」と呼ばれる李清照は、その波乱に富んだ人生から生まれた詞ゆえにか、唐詩には見られない女心の憂悶や沸き上がる情熱を詠っていて心惹かれます。
彼女の生涯については別にまとめるつもりですが、彼女自身で記した「金石錄後序」をご覧ください。
この李清照と並んで宋代女性作家の双子星座と称されるのが朱淑眞です。「断腸詞人」と呼ばれています。
李清照と朱淑真は全詞を挙げました。(補遺として李清照の詞と思われる一四首も挙げています)
もう一人は「薄命詞人」と呼ばれる呉淑姫。ここでは代表作とされる、四首を掲載しています。
]]>追補 李清照漢詩(五首)http://kansi.sankouan.sub.jp/?eid=9465812009-03-26T22:13:43+09:002010-10-16T01:17:58Z2009-03-26T13:13:43Z
追補 李清照漢詩(五首)
李清照の漢詩は断句も含めて二十首ほどある。
ここでは五首を揚げる。
なお、原詩と詩論の原文を一覧としてまとめてある。
目次
・絶句(夏日絶句・烏江)
・春殘
・題八詠樓
・偶成
・曉夢
・一覧・李清照の漢詩と...杉篁庵庵主(李清照漢詩)
追補 李清照漢詩(五首)
李清照の漢詩は断句も含めて二十首ほどある。
ここでは五首を揚げる。
なお、原詩と詩論の原文を一覧としてまとめてある。
目次
・絶句(夏日絶句・烏江)
・春殘
・題八詠樓
・偶成
・曉夢
・一覧・李清照の漢詩と詩論
]]>一覧・李清照の漢詩と詩論http://kansi.sankouan.sub.jp/?eid=9465842009-03-26T21:49:26+09:002009-03-26T13:08:05Z2009-03-26T12:49:26Z
詩
?溪中興頌詩和張文潛二首
五十年功如電掃,華清宮柳咸陽草。
五坊供奉斗雞兒,酒肉堆中不知老。
胡兵忽自天上來,逆胡亦是好雄才。
勤政樓前走胡馬,珠翠踏盡香塵埃。
何為出戰輒披靡,傳置荔枝多馬死。
堯功舜?本如天,安用區區紀文字。...杉篁庵庵主(李清照漢詩)
詩
?溪中興頌詩和張文潛二首
五十年功如電掃,華清宮柳咸陽草。
五坊供奉斗雞兒,酒肉堆中不知老。
胡兵忽自天上來,逆胡亦是好雄才。
勤政樓前走胡馬,珠翠踏盡香塵埃。
何為出戰輒披靡,傳置荔枝多馬死。
堯功舜?本如天,安用區區紀文字。
著碑銘?真陋哉,乃令神鬼磨山崖。
子儀光粥不自猜,天心悔禍人心開。
夏商有鑒當深戒,簡策汗青今俱在。
君不見當時張說最多機,雖生已被姚崇賣。
君不見驚人廢興傳天寶,中興碑上今生草。
不知負國有姦雄,但說成功尊國老。
誰令妃子天上來,虢秦韓國皆天才。
花桑羯鼓玉方響,春風不敢生塵埃。
姓名誰復知安史,健兒猛將安眠死。
去天尺五抱甕峰,峰頭鑿出開元字。
時移勢去真可哀,姦人心醜深如崖。
西蜀萬里尚能返,南內一閉何時開。
可憐孝?如天大,反使將軍稱好在。
嗚呼,奴輩乃不能道:「輔國用事張后尊」,乃能念:「春薺長安作斤賣。」
感懷
宣和辛丑八月十日到萊,獨坐一室,生所見皆不在目前。几上有《禮韻》,因信手開之,約以所開為韻作詩。偶得「子」字,因以為韻,作感懷詩云:
寒窗敗几無書史,公路生平何至此。
青州從事孔方兄,終日紛紛喜生事。
作詩謝絕聊閉門,虛室生香有佳思。
靜中吾乃得至交,烏有先生子虛子。
分得知字韻
學詩三十年,緘口不求知。
誰遣好騎士,相逢說項斯。
偶成
十五年前花月底,相從曾賦賞花詩。
今看花月渾相似,安得情懷似昔時。
詠史
兩漢本繼紹,新室如贅疣。
所以嵇中散,至死薄殷周。
烏江
生當作人傑,死亦為鬼雄。
至今思項羽,不肯過江東。
曉夢
曉夢隨疏鐘,飄然躋雲霞。
因緣安期生,邂逅萼?華。
秋風正無?,吹盡玉井花。
共看藕如船,同食棗如瓜。
翩翩座上客,意妙語亦佳。
嘲辭斗詭辯,活火分新茶。
雖非助帝功,其樂何莫涯。
人生能如此,何必歸故家。
起來斂衣坐,掩耳厭喧嘩。
心知不可見,唸唸猶咨嗟。
春殘
春殘何事苦思鄉,病裡梳妝恨髮長。
樑燕語多終日伴,薔薇風細一簾香。
夜發嚴灘
巨艦只緣因利往,扁舟亦是為名來。
往來有媿先生?,特地通宵過釣台。
題八詠樓
千古風流八詠樓,江山留與後人愁。
水通南國三千里,氣壓江城十四州。
上樞密韓公工部尚書胡公三首並序
紹興癸丑五月,樞密韓公、工部尚書胡公使虜,通兩宮也。有易安室者,父祖皆出韓公門下。今家世淪替,子姓寒微,不敢望公之車塵;又貧病,但神明未衰落,見此大號令,不能忘言。作古律詩各一章,以寄區區之意,以待採詩者云。
其一
三年夏六月,天子視朝久。
凝旒望南雲,垂衣思北狩。
如聞帝若曰,岳牧與群後。
賢寧無半千,運已遇陽九。
勿勒燕然銘,勿種金城柳。
豈無純孝臣,識此霜露悲。
何必羹捨肉,便可車載脂。
土地非所惜,玉帛如塵泥。
誰當可將命,幣厚詞益卑。
四岳僉曰俞,臣下帝所知。
中朝第一人,春官有昌黎。
身為百夫特,行足萬人師。
嘉佑與建中,為政有皋夔。
匈奴畏王商,吐蕃尊子儀。
夷狄已破膽,將命公所宜。
公拜手稽首,受命白玉犀。
曰臣敢辭難,此亦何等時。
家人安足謀,妻子不必辭。
願奉天地靈,願奉宗廟威。
徑持紫泥詔,直入黃龍城。
單于定稽顙,侍子當來迎。
仁君方恃信,狂生休請纓。
或取犬馬血,與結天地盟。
其二
胡公清?人所難,謀同?協心志安。
脫衣已被漢恩暖,離歌不道易水寒。
皇天久陰后土濕,雨勢未回風勢急。
車聲轔轔馬蕭蕭,壯士懦夫俱感泣。
閭閻嫠婦亦何知,瀝血投書干記室。
夷虜從來性虎狼,不虞預備庸何傷。
衷甲昔時聞楚幕,乘城前日記平涼。
葵丘踐土非荒城,勿輕談士棄儒生。
露布詞成馬猶倚,崤函關出雞未鳴。
巧匠何曾棄樗櫟,芻蕘之言或有益。
不乞隋珠與和壁,只乞鄉關新信息。
靈光雖在應蕭蕭,殘虜如聞保城郭。
嫠家父祖生齊魯,位下名高人比數。
當時稷下縱談時,猶記人揮汗如雨。
子孫南渡今幾年,漂流逐與流人伍。
欲將血淚寄山河,去灑青州一坯土。
其三
想見皇華過二京,壺漿夾道萬人迎。
連昌宮裡桃應在,華萼樓頭鵲定驚。
但說帝心憐赤子,須知天意念蒼生。
聖君大信明如日,長亂何須在屢盟。
詞論
樂府聲詩並著,最盛於唐。開元、天寶間,有李八郎者,能歌擅天下。時新及第進士開宴曲江,榜中一名士,先召李,使易服隱姓名,衣冠故敝,精神慘沮,與同之宴所。曰:「表弟願與坐末。」眾皆不顧。既酒行樂作,歌者進,時曹元謙、念奴為冠,歌罷,眾皆咨嗟稱賞。名士忽指李曰:「請表弟歌。」眾皆哂,或有怒者。及轉喉發聲,歌一曲,眾皆泣下。羅拜曰:此李八郎也。」
自後鄭、衛之聲日熾,流糜之變日煩。已有《菩薩蠻》、《春光好》、《莎雞子》、《更漏子》、《浣溪沙》、《夢江南》、《漁父》等詞,不可遍舉。五代干戈,四海瓜分豆剖,斯文道息。獨江南李氏君臣尚文雅,故有「小樓吹徹玉笙寒」、「吹皺一池春水」之詞。語雖甚奇,所謂「亡國之音哀以思」也。逮至本朝,禮樂文武大備。又涵養百餘年,始有柳屯田永者,變舊聲作新聲,出《樂章集》,大得聲稱於世;雖協音律,而詞語塵下。又有張子野、宋子京兄弟,沈唐、元絳、晁次膺輩繼出,雖時時有妙語,而破碎何足名家!至晏元獻、歐陽永叔、蘇子瞻,學際天人,作為小歌詞,直如酌蠡水於大海,然皆句讀不茸之詩爾。又往往不協音律,何耶?蓋詩文分平側,而歌詞分五音,又分五聲,又分六律,又分清濁輕重。且如近世所謂《聲聲慢》、《雨中花》、《喜遷鶯》,既押平聲韻,又押入聲韻;《玉樓春》本押平聲韻,有押去聲,又押入聲。本押仄聲韻,如押上聲則協;如押入聲,則不可歌矣。
王介甫、曾子固,文章似西漢,若作一小歌詞,則人必絕倒,不可讀也。乃知詞別是一家,知之者少。後晏叔原、賀方回、秦少游、黃魯直出,始能知之。又晏苦無鋪敘。賀苦少重典。秦即專主情致,而少故實。譬如貧家美女,雖極妍麗豐逸,而終乏富貴態。黃即尚故實而多疵病,譬如良玉有瑕,價自減矣。
]]>五 曉夢http://kansi.sankouan.sub.jp/?eid=9465602009-03-26T21:09:15+09:002009-03-26T13:09:23Z2009-03-26T12:09:15Z
曉夢 李清照
曉夢隨疏鐘, 飄然躡雲霞。
因緣安期生, 邂逅萼?華。
秋風正無頼, 吹盡玉井花。 (元績=無頼)
共看藕如船, 同食棗如瓜。
翩翩坐上客, 意妙語亦佳。 (坐=座)
嘲辭鬥詭辯, 活火分新茶。 (鬥=闘)
雖非助帝功, ...杉篁庵庵主(李清照漢詩)
曉夢 李清照
曉夢隨疏鐘, 飄然躡雲霞。
因緣安期生, 邂逅萼?華。
秋風正無頼, 吹盡玉井花。 (元績=無頼)
共看藕如船, 同食棗如瓜。
翩翩坐上客, 意妙語亦佳。 (坐=座)
嘲辭鬥詭辯, 活火分新茶。 (鬥=闘)
雖非助帝功, 其楽莫可涯 (莫可=何莫)
人生能如此, 何必歸故家。
起來斂衣坐, 掩耳厭喧嘩。
心如不可見, 念念猶咨嗟。 (如=知)
( )内は異本
暁の夢 疎鐘に随ひ
飄然として雲霞を躡み、
安期生に因縁して
萼緑華に邂逅す。
秋風は正に頼る無く
玉井の花を吹き尽くす。
共に看る藕は船の如く
同じく食する棗は瓜の如し。
翩翩たり坐上の客
意は妙にして語も亦た佳なり。
嘲辞 詭弁を闘はし
火を活かして新茶を分かつ。
帝功を助けざると雖も
其の楽みは涯る可く莫く、
人生 能く此くの如くなれば
何ぞ必ずしも故家に帰らん。
起き来って衣を斂めて坐し
耳を掩ひて喧嘩を厭ふに
心は見るべからさる如く
念念 猶咨嗟す。
・疏鍾・・まばらな鍾の声。
・飄然・・ふらりとやって来るさま。こだわらないさま。
・躡・・そっと足を運ぶ。
・因緣・・由来。
・安期生・・千歳の長生を得たという、秦時代の仙人。秦の始皇帝が長生の教えをこうために謁見したが、蓬莱山に捜しにくるようにといい、姿をけしてしまった。金液の服用により長寿を得たと伝えられる。李少君(安期生の弟子)は安期生に瓜のような大きなナツメをもらって食べて長寿を得たという。
・萼緑華・・古代の伝説中の南山の美少女、仙女。
・邂逅・・思いがけなく出会うこと。めぐりあい。
・無頼・・頼みにするところのないこと。
・玉井花・・韓愈の詩「玉井蓮詩」に「太華峰頭玉井蓮、開花十丈藕如船」"の句がある。
・藕・・蓮(はす)。ここは蓮の葉。「如船」は韓愈の詩による。
・棗・・ナツメの実。李少君の故事による。
・翩翩・・軽やかにひるがえるさま。ひらひら。かるがるしいさま。
・嘲辞・・あざけりの言葉。お茶比べの言葉であろう。
・詭弁・・間違っていることを、正しいと思わせるようにしむけた議論。
・活火・・「茶須緩火炙、活火煎」
・分新茶・・宋代の分茶という遊び。抹茶にお湯を注ぎ、茶筅で泡を立て花や動物などを図案を作り出す遊び。宋では新茶の季節に必ず「斗茶(闘茶)」が行われ、范仲淹の詩では「勝者登仙不可攀、輸同降将無窮恥」(勝てば、仙人になったように偉くなり、近よりがたい。負ければ、投降した将のようにその恥は窮まりない。)と詠われている。
・斂・・おさめる。斂衣は装いを整えるの意。
・喧嘩・・騒がしさ。
・猶・・なお、いまだに。
・咨嗟・・なげき嘆息すること。
【詩意】
(喧騒の時代にあって幻想的な中に身を置く冥想的詩篇。目覚めれば国家についても身の上についても辛く悲惨な状況にある。)
明け方に見た夢は まばらな鍾の音に乗って
ふらりと雲霞の中に入り込み、
千歳の長生を得た安期生に因み
美少女の仙女萼緑華に巡り逢いました。
秋風がちょうど無法にも
玉井の蓮の花を吹き尽くしています。
共に看る蓮の葉は大きくまるで船のよう
同じく二人で食べる棗も瓜の如くに大きいのです。
軽やかな坐上の客は
気持ちは言葉で表せないほどすばらしく言葉もまた美しいのです。
茶の善し悪しをあれこれと論じ比べ合い
湧かしたお湯を注いで新茶を楽しみます。
こんな楽しみが帝の功を助けることはないといっても
終わるはずはなく、
人生も都合よくこのようであれば
どうして必ず故郷に帰ろうと思うでしょうか。
目覚めた後、起きなおって装いを整えて坐ってみますが
世の中の喧騒は耳をおおうばかりでいやになります。
心の中は実際には見ることもできないのですが
その思いにただただため息をつくばかりです。
参考
玉井蓮詩 韓愈
太華峰頭玉井蓮,
開花十丈藕如船。
冷比雪霜甘比蜜,
一片入口沈痾痊。
我欲求之不憚遠,
青壁無路難夤緣。
安得長梯上摘實,
下種七澤根株連。
]]>四 偶成http://kansi.sankouan.sub.jp/?eid=9465552009-03-26T21:01:34+09:002009-03-26T13:09:41Z2009-03-26T12:01:34Z
偶成 李清照
十五年前花月底,
相從曾賦賞花詩。
今看花月渾相似、
安得情懷似往時。
十五年の前 花月の底(もと)、
相ひ従ひて曾(かつ)て花を賞(たた)ふる詩を賦しき。
今 花月を看るに渾(あたか)も相ひ似たるも、
安(いづく)んぞ往時に似たる情...杉篁庵庵主(李清照漢詩)
偶成 李清照
十五年前花月底,
相從曾賦賞花詩。
今看花月渾相似、
安得情懷似往時。
十五年の前 花月の底、
相ひ従ひて曾て花を賞ふる詩を賦しき。
今 花月を看るに渾も相ひ似たるも、
安んぞ往時に似たる情懐を得んや。
・底・・下。「花底、はなのもと」
・相從・・(いっしょ)に寄り添う。 ・從・・したがう。附き添う。
・曾(かつて)・・以前。前に。
・賦・・(詩を)作る、吟ずる。
・渾(すべて・あたかも)・・すっかり、まるで、ほとんど。すべて、まったく。ほとんど…ばかり。
・安・・怎。(疑問・反語を表す語を下に伴って)どうして。なんで。
【詩意】
花と月の美しかった十五年も前の春の宵、その花と月の光のもとで、
夫と二人共に花を愛でて詩を創ったことがありました。
夫亡き今 花も月もまるで以前のままに美しいのですが
どうしてあの時の心浮き立つ想いを蘇らすことができましょう。
この詩は夫趙明誠が亡くなった後のものであるが、具体的な時ははっきりしない。
目の前の景色が以前夫といっしょにいた幸福だった生活を呼び覚まし、感慨深く思い、今の辛さが更に増幅される心情を詠っている。
]]>三 題八詠樓http://kansi.sankouan.sub.jp/?eid=9465482009-03-26T20:57:22+09:002009-03-26T13:10:00Z2009-03-26T11:57:22Z
題八詠樓 李清照
千古風流八詠樓,
江山留與後人愁。
水通南國三千里,
氣壓江城十四州。
千古の風流 八詠楼、
江山 留め与ふるは 後人の愁ひ。
水は通ず 南国 三千里、
気は圧す 江城 十四州。
五十二歳のとき(紹興五年・11...杉篁庵庵主(李清照漢詩)
題八詠樓 李清照
千古風流八詠樓,
江山留與後人愁。
水通南國三千里,
氣壓江城十四州。
千古の風流 八詠楼、
江山 留め与ふるは 後人の愁ひ。
水は通ず 南国 三千里、
気は圧す 江城 十四州。
五十二歳のとき(紹興五年・1134年)、金軍が臨安に迫り、臨安の西南にある金華に避難したときの作。
・八詠樓・・玄暢楼のこと。南朝斉の東陽太守沈約が立てた建築物で、玄暢楼を詠んだ詩作八首に基づく名。浙省金華。
・後人愁・・後人はこの詩の場合、作者とその同じ時代の人を指す。愁は、八詠楼から見える国土が金の敵に侵略された憂い。
・水通・・川は流れている。
・三千里・・極めて広い範囲ことをいう。
・十四州・・ここは、江南一帯。広い地域の意。
【詩意】
千古の昔から、風格高く風雅なたたずまいの玄暢楼。
この楼閣から眺める景色の美しいさは、却って、私の憂いを増すばかり。
川や運河は江南の広い地域を通って、南の各都市へ繋がり、
憂国の気が川沿いの広大な江南一帯の十四州までも圧している。
夫・趙明誠に死なれて後は、金の中原への侵略によって、南国の江南の地を逃げまわる生活を強いられた。その時の心境を表した詩のひとつである。
国破れ、北から南へ逃げる惑う戦乱の中で、八詠楼の景色のすばらしさを詠うことによって、南宋の皇帝や南宋官僚の腐敗を批判している。第2句の「江山」「留与」「後人愁」の言葉には、強烈な批判が含められている。
]]>二 春殘http://kansi.sankouan.sub.jp/?eid=9465462009-03-26T20:51:48+09:002009-03-26T13:10:23Z2009-03-26T11:51:48Z
春殘 李清照
春殘何事苦思郷
病裡梳頭恨髪長
梁燕語多終日在
薔薇風細一簾香
春残(しゅんざん)何事ぞ苦(はなは)だ郷(きょう)を思ふ
病裏(へいり)頭(こうべ)を梳(くしけず)りて髪の長きを恨む
梁燕(りょうえん)語(ご)多くして終日(しゅう...杉篁庵庵主(李清照漢詩)
春殘 李清照
春殘何事苦思郷
病裡梳頭恨髪長
梁燕語多終日在
薔薇風細一簾香
春残何事ぞ苦だ郷を思ふ
病裏頭を梳りて髪の長きを恨む
梁燕語多くして終日在り
薔薇風細やかにして一簾香し
春殘・・晩春
苦・・しきりに、とても
梁燕・・梁の上に巣をかけている燕
語多・・燕がしきりにさえずり交わしている
【詩意】
春もゆこうとしているいま、何故かとても故郷が懐かしく思われます。
病床にあって、髪をすくと、あまりに長さが煩わしく思えます。
梁の上の燕は日がな一日さえずり続け、
庭の薔薇がそよ風に乗って簾ごしに薫っています。
堀辰雄は好きな本のひとつに『歴朝名媛詩詞』をあげ、そのなかでも一番好きな詩人は、李清照で、この「春残」を、「そのうたの意味はね、病み上がりの美人が、窓辺に頬杖でもついて、何かもの思いに耽っているとかすかな、ちょっと簾を動かすだけの風が吹いてきて、薔薇の匂いがかすかにしてきた、というようなものだけど──風ほそくして、なんて言うのはいい言葉でしょう、」と言ったという。(中里恒子の随筆「石榴を持つ聖母の手」)
]]>一 絶句 (夏日絶句・烏江)http://kansi.sankouan.sub.jp/?eid=9465402009-03-26T20:46:51+09:002009-03-26T13:10:52Z2009-03-26T11:46:51Z
絶句 (夏日絶句・烏江)
李清照
生當作人傑,
死亦爲鬼雄。
至今思項?,
不肯過江東。
生きて、当に、人傑と作(な)り、
死して、亦、鬼雄と為(な)るべし。
至今(いま)、項羽を思ふ、
江東過(わ)たるを肯せんせざるを。
・烏江・...杉篁庵庵主(李清照漢詩)
絶句 (夏日絶句・烏江)
李清照
生當作人傑,
死亦爲鬼雄。
至今思項?,
不肯過江東。
生きて、当に、人傑と作り、
死して、亦、鬼雄と為るべし。
至今、項羽を思ふ、
江東過たるを肯せんせざるを。
・烏江・・安徽省を流れる川。項羽が劉邦によって滅ぼされた地。
・人傑・・衆に抜きんでて優れた人物。
・鬼雄・・幽鬼の中でぬきんでている者。殉国の英雄。
・至今・・今に至って。今なお。
【詩意】
人間は生きている間、人傑になるべきである。
たとえいつか死ぬ時になっても、鬼中の英雄になるべきのである。
今になっても、私は昔の項羽のことを懐かしく思ったのだ
彼はすくなくでも、死んでも、江東へ戻らないという気迫があったのだ。
生きては豪傑となり
死してまた英雄となれ。
いま項羽を思う、
逃げずに自刎した彼を。
この詩は、秦(前221-前206)末の武将、項羽(前232-前202)の物語を借用して、異民族の金に侵略され南方に逃れる皇帝と官僚たちの腐敗と不甲斐無さを批判諷刺するもの。
項羽は秦の暴政に対し立ちあがり、その強力な戦闘力により勝利し続けたが、最後に垓下で劉邦に敗れる。その際、追い詰められた項羽は逃げようと思えば逃げられたが、逃げては決起した時に江南から連れてきた8000人の若者の父母に会わせる顔がないといい自刎する。詩の、死してなお英雄となった、とはこの行為を指す。こうした歴史を表に出して、憤慨する気持ちを強く表現した詩であろう。
この時の項羽の詩。
垓下歌 項羽
力拔山兮氣蓋世,
時不利兮騅不逝。
騅不逝兮可奈何,
虞兮虞兮柰若何。
力 山を抜き 気 世を蓋う
時 利あらずして 騅 逝かず
騅の逝かざる 奈何すべき
虞や虞や 若を奈何せん
(自分の力は山を抜き、覇気は世を覆うほどであるというのに、時勢は不利であり、騅(すい)も前に進もうとはしない。騅が進まないのはどうしたらよいのだろうか。虞(ぐ)や、虞や、お前の事もどうしたらよいのだろうか)騅は名馬、虞は項羽の愛妾で、自殺した虞美人の伝説はヒナゲシに「虞美人草」という異名がつく由来となっている。
]]>ご意見ご批判はこちらへhttp://kansi.sankouan.sub.jp/?eid=9249082009-02-06T22:36:55+09:002009-02-06T13:49:54Z2009-02-06T13:36:55Zご意見ご批判はこちらでのみ受け付けたいと思います。宜しく。杉篁庵庵主ご意見ご批判はこちらへ李清照詞補遺14首・目次・http://kansi.sankouan.sub.jp/?eid=7698242008-09-01T11:08:49+09:002010-10-16T01:17:58Z2008-09-01T02:08:49Z
李清照詞補遺一四首
李清照全詞集に採られているのは四九首です。
しかしその他、李清照作品として伝わるものも多いのです。李清照全詞集に採られていない作品は、清照作が疑われた作品ですが、ここに掲載する詞は、その中でも李清照の作としてもいいのでは...杉篁庵庵主目次・清照補遺
李清照詞補遺一四首
李清照全詞集に採られているのは四九首です。
しかしその他、李清照作品として伝わるものも多いのです。李清照全詞集に採られていない作品は、清照作が疑われた作品ですが、ここに掲載する詞は、その中でも李清照の作としてもいいのではないかと思われるものを、補遺として挙げています。
各番号の後は、「詞牌(=詞の形式名)」次に「題(副題)」のある場合は記し〔( )内にあるのは異本による〕、次に「初句」を記しています。(08-5-15より順次アップ、以後修正更新します)
・目次・(各詞のページにリンク)
補1 怨王孫 (「春暮」) 夢斷漏悄
補2 怨王孫 (「春暮」) 帝裡春晚
補3 浪淘沙 (「閨情」) 簾外五更風
補4 青玉案 (「送別」) 征鞍不見邯鄲路
補5 采桑子 (「夏意」) 晚來一陣風兼雨
補6 浪淘沙 (「閨情」) 素約小腰身
補7 如夢令 誰伴明窗獨坐
補8 品令 零落殘紅
補9 品令 急雨驚秋曉
補10 鷓鴣天 「春閨」 枝上流鶯和淚聞
補11 青玉案 (「春日懷舊」) 一年春事都來幾
補12 新荷葉 薄露初零
補13 憶少年 疏疏整整
補14 菩薩蠻 ?雲鬢上飛金雀
]]>補14 菩薩蠻 ?雲鬢上飛金雀http://kansi.sankouan.sub.jp/?eid=8403812008-09-01T11:06:41+09:002009-02-05T13:51:05Z2008-09-01T02:06:41Z
菩薩蠻 李清照
?雲鬢上飛金雀、悉眉翠歛春煙薄。
香閣掩芙蓉、畫屏山幾重。
窗寒天欲曙、猶結同心苣。
啼粉污羅衣、問郎何日歸?
《和訓》
緑なす雲鬢の上に金雀を飛ばし、悉(ふつ)に眉翠の春煙の薄きを歛(あつ)む。
香閣芙蓉に掩(お...杉篁庵庵主(清照補遺)
菩薩蠻 李清照
?雲鬢上飛金雀、悉眉翠歛春煙薄。
香閣掩芙蓉、畫屏山幾重。
窗寒天欲曙、猶結同心苣。
啼粉污羅衣、問郎何日歸?
《和訓》
緑なす雲鬢の上に金雀を飛ばし、悉(ふつ)に眉翠の春煙の薄きを歛(あつ)む。
香閣芙蓉に掩(おほ)はれ、画屏の山 幾重なり。
窓の寒く天曙(あ)けんと欲し、猶ほ同心の苣を結ぶ。
啼きて粉の羅衣を汚し、郎に問ふ何日帰るやと。
《語釈》
・?:女性の髪をほめていう。つやつやとした美しい。
・雲鬢:女の鬢の美しさを雲にたとえた語。また、美しい女のこと。
・金雀:かんざしの首に金の雀をつけたもの。
・悉:すっかり。ことごとく。ふつに。
・眉翠:黛。
・歛:おもう、ねがう、欲する。あたう(予)。古くは“斂”と同じく、聚集の意。
・香閣:女性の住む建物。
・芙蓉:ハスの花(【同】[荷花])
・掩:閉ざす。
・畫屏:絵が描かれている屏風。
・欲:…しそうである。
・同心苣:連鎖するたいまつ状のデザインの花紋様。古く心を一つにするという愛情の象徴として用いる。
・苣:たいまつ。
・粉:白粉(おしろい)。
・羅衣:薄絹(うすぎぬ)で仕立てた着物。
・郎:女性から夫や恋人に対する旧時の呼称。
《詞意》
豊かな黒髪に金雀の簪を揺らし、眉には残らず春霞を薄く集めました。
私の部屋は芙蓉の花に覆われ、屏風が山のよう幾重にも囲んでいます。
窓辺は寒くなって間もなく夜が明けようとしていますが、さらになお契りを結びます。
泣いては白粉で薄絹を汚し、貴方に今度はいつお帰りと問うばかりです。
]]>補13 憶少年 疏疏整整http://kansi.sankouan.sub.jp/?eid=8403772008-09-01T10:58:29+09:002009-02-05T13:51:27Z2008-09-01T01:58:29Z
憶少年 李清照
疏疏整整、斜斜淡淡、盈盈脈脈。
徒憐暗香句、笑梨花顏色。
羈馬蕭蕭行又急。
空回首、水寒沙白。
天涯倦牢落、忍一聲羌笛。
《和訓》
疏疏整整、斜斜淡淡、盈盈脈脈。
徒らに暗香の句を憐れみ、梨花の顏色を笑ふ。
羈馬...杉篁庵庵主(清照補遺)
憶少年 李清照
疏疏整整、斜斜淡淡、盈盈脈脈。
徒憐暗香句、笑梨花顏色。
羈馬蕭蕭行又急。
空回首、水寒沙白。
天涯倦牢落、忍一聲羌笛。
《和訓》
疏疏整整、斜斜淡淡、盈盈脈脈。
徒らに暗香の句を憐れみ、梨花の顏色を笑ふ。
羈馬蕭蕭として行くに又た急なり。
空しく首を回らすに、水寒く沙白し。
天涯に牢落を倦みて、一声の羌笛に忍ぶ。
《語釈》
・疏疏:まばら、密接でない。服装が鮮かで整っいてる様子。ぼんやりした様子。
・整:きちんとしている、整っている。・整整:まるまる、きっちり。整然として厳格な様子。
・斜:斜めの、傾いた。十分に身構える。
・淡淡:静かに水をたたえるさま。水が静かにたゆたうさま。
・盈盈(えいえい):水の満ちるさま。(水が)澄みきった。(姿や態度が)上品な。軽やかな。
・脈脈:途絶えずに力強く続くさま。
・徒:むなしい、何もない、ただ…だけ。
・暗香:どこからともなくただよってくる芳香。やみにただよう花などの香。
・羈馬:旅に出る馬。
・蕭蕭:風雨・落葉などの音のものさびしいさま。ものさびしいさま。
・天涯:世界中。 空のはて。また、非常に遠い所。
・倦:飽きる、倦(う)む。
・牢落:心がうつろなさま。さびしいさま。
・忍:つらいことを我慢する。気持ちが外に表れそうになるのをじっとこらえる。
・羌笛(きょうてき):青海地方にいた西方異民族(チベット系の人)の吹く笛。
《詞意》
時は水の流れのように疏疏と整整と、斜斜と淡淡と、満ち満ちて脈脈と流れます。
ただ漂う芳香を詠んだ句を憐れみ、梨の花のような顔色を笑ふばかり。
旅の馬は寂しげに急ぎ行きます。
虚しく首を回らせますと、水は寒く砂の道が白く続いています。
天涯にひとり虚ろな寂しさにも倦み、一声の羌笛に忍んでいます。
]]>補12 新荷葉 薄露初零http://kansi.sankouan.sub.jp/?eid=8403752008-09-01T10:54:35+09:002009-02-05T13:51:49Z2008-09-01T01:54:35Z
新荷葉 李清照
薄露初零、長宵共、永晝分停。 (晝=盡・書)
繞水樓臺、高聳萬丈蓬瀛。
芝蘭為壽、相輝映、簪笏盈庭。
花柔玉淨、捧觴別有娉婷。
鶴瘦松青、精神與、秋月爭明。
?行文章、素馳日下聲名。
東山高蹈、雖卿相、不足為榮。
...杉篁庵庵主(清照補遺)
新荷葉 李清照
薄露初零、長宵共、永晝分停。 (晝=盡・書)
繞水樓臺、高聳萬丈蓬瀛。
芝蘭為壽、相輝映、簪笏盈庭。
花柔玉淨、捧觴別有娉婷。
鶴瘦松青、精神與、秋月爭明。
?行文章、素馳日下聲名。
東山高蹈、雖卿相、不足為榮。
安石須起、要蘇天下蒼生。
《和訓》
薄き露初めて零(こぼ)れ、長き宵と永き昼とを共に分停す。
水を繞(ま)く楼台、高く聳ゆ万丈の蓬(よもぎ)の瀛(うみ)。
芝蘭寿を為し、相ひ輝き映えて、簪笏の庭に盈(み)つ。
花柔らかく玉淨(きよ)く、觴を捧げて別に娉婷(うるはし)き有り。
鶴痩せ松青く、精神と、秋月明を争ふ。
徳行の文章、素より日下に声名を馳す。
東山の高蹈、卿相と雖ども、栄為すに足らず。
安石須らく起ちて、天下の蒼生を蘇らすを要す。
《語釈》
・分停:平等に分ける。秋分の日。
・繞:巻く。めぐる。
・聳:そびえる。
・萬丈:万丈の高さ(深さ)の、まことに高い(深い)。
・蓬:よもぎ。蓬莱(ほうらい)は中国の神仙思想で説かれる想像上の仙境。東方の海上にあって、仙人が住む、不老不死の地と信じられた。蓬莱山。蓬莱島。よもぎがしま。
・瀛:大海。
・芝蘭:霊芝と蘭(ふじばかま)。めでたい草とかおりのよい草。すぐれたものや人にたとえる。ここは長寿を祝われる人。
・簪笏:かんざし・しゃく。祝いに来た高官・官女を指す。
・盈:満ちる。
・觴:酒盃。
・娉婷(へいてい):(婦人の姿や振舞いが)優雅な、美しい。美女。
・鶴瘦松青:仙鶴と常緑と共に長寿を祝う言葉。
・精神:神態、玉精神。神のような姿。女たちのすばらしい表情と態度を言う。
・徳行:修行によって得られる優れた状態や能力である徳と、それを実現する方法である行。功徳と行法。
・素:もとより。いうまでもなく。もちろん。
・馳:伝播する、広く伝わる。
・日下:首都。京都。
・聲名:よい評判。ほまれ。名声。
・高蹈:世俗の欲望を超越して、気位を高く保つ人。
・卿相:天子をたすけて政治をとる人々。公卿(くぎよう)。
・安石:謝安(しゃ あん320年 - 385年)中国東晋の政治家。東晋の危機を幾度と無く救った。詞はこの謝安の故事によっている。40歳になっても宮仕えせず、会稽の東山で気ままに暮らしていたので「東山高臥(とうざんこうが)」=世を離れ気ままに暮らす、という四字熟語がある。「悠悠自適」と近いが、大人物が風流な遊びを楽しむ、というニュアンスが強い。また「東山再起(退いた者が再び世に現れること。元の地位に復帰する。捲土重来)」という熟語も彼の故事による。
・須:…すべきである、…しなければならない
・蒼生:多くの人々。庶民。国民。あおひとぐさ。
《詞意》
初めて露がおりて、夜と昼とが等しく分けられる秋分の祝いの日を迎えています。
水に囲まれた楼台は、深い海の中に高く聳える不老不死の蓬莱島のようです。
優れたお方の長寿を祝い、輝くばかりの高官・官女が庭に集っています。
飾られる花や玉はしなやかに美しく、婦人たちは優雅なしぐさで盃を捧げ持っています。
鶴や松の長寿にあわせ、婦人たちの美と、秋の月が明るさを争っているようです。
貴方の徳を積んだ文章は、いうまでもなく天下に名声を馳せています。
世俗を超越しておられる方には、大臣の地位もそのほまれには十分ではありません。
どうぞ再び復帰なされて、世の人々を蘇らせてください。
]]>補11 青玉案 「春日懷舊」一年春事都來幾http://kansi.sankouan.sub.jp/?eid=8403722008-09-01T10:50:13+09:002009-02-05T13:52:12Z2008-09-01T01:50:13Z
青玉案 李清照
(「春日懷舊」)
一年春事都來幾、早過了、三之二。
?暗紅嫣渾可事。
?楊庭院、暖風簾幕、有個人憔悴。 (幕=莫)(個=箇)
買花載酒長安市、又爭似、家山見桃李。
不枉東風吹客淚。
相思難表、夢魂無據、惟有歸來是。
(...杉篁庵庵主(清照補遺)
青玉案 李清照
(「春日懷舊」)
一年春事都來幾、早過了、三之二。
?暗紅嫣渾可事。
?楊庭院、暖風簾幕、有個人憔悴。 (幕=莫)(個=箇)
買花載酒長安市、又爭似、家山見桃李。
不枉東風吹客淚。
相思難表、夢魂無據、惟有歸來是。
(一説に歐陽修作)
《和訓》
一年の春事 都(すべ)て幾(いか)ほど来たるや、早や三のうちの二を過ぎぬ。
緑暗く紅嫣(あざ)やかに、渾(すべ)て可(よ)き事なり。
緑楊の庭院、暖風の簾幕、しかして個人には憔悴の有り。
花を買ひ酒を載する長安の市、又争(いかで)か家山の桃李を見るに似(し)かむ。
枉(むなし)からず東風(こち)客の涙を吹く。
相思表すに難く、夢魂據(よるべ)の無く、惟だ帰り来たりて是に有り。
《語釈》
・都:すべて。一般的にいって。大体。総じて。都はよせ合せる義。
・嫣:(容貌が)美しい、器量のよい。色彩が鮮やか。
・渾可事:自然によく合ったこと。・渾:すべて。天然の、自然のままの。
・庭院:中庭。
・簾幕:スダレと幕。帷幕。
・個人:(自称として)私。
・載酒:酒席を設ける。酒宴の用意をする。
・爭:なぜ、どうして。
・似:しく。匹敵する。かなう。およぶ。
・家山:ふるさと。故郷。
・枉:曲がる、歪める。無駄に。いたずらに。むなしく。しいたげる。
・東風:春、東から吹く風。こち。
・客:旅客。異郷に滞在あるいは寄留する(人)。ここは自身のこと。
・相思:(離ればなれで)思うにまかせぬ切なさ。
・據:よる。…に従って。依存する、頼みとする。よるべ。
《詞意》
今年の春も早くも半ばを過ぎてしまいました。
緑はいよいよ濃く花の紅も鮮やかで時の移ろいは自然のままに変わり有りません。
柳の新緑に包まれた中庭、暖かい風が揺らすカーテン、その中で私にはやつれ果てています。
宴席の華やかな都で花を買っても、どうして故郷で桃の花を見るのに敵いましょう。
いたずらに風が異郷にある私の涙に濡れた頬を吹きすぎます。
この切なさは現し難く、夢見る魂は頼りにするところも無く、ただここに一人帰るしかありません。
]]>補10 鷓鴣天 「春閨」枝上流鶯和涙聞http://kansi.sankouan.sub.jp/?eid=8403692008-09-01T10:44:37+09:002009-02-05T13:52:32Z2008-09-01T01:44:37Z
鷓鴣天 李清照
春閨
枝上流鶯和淚聞、新啼痕間舊啼痕。
一春魚雁無消息、千裡關山勞夢魂。 (雁=鳥)
無一語、對芳尊、安排腸斷到黃昏。
甫能炙得燈兒了、雨打梨花深閉門。
(一說に秦觀作、無名氏作。)
《和訓》
枝上...杉篁庵庵主(清照補遺)
鷓鴣天 李清照
春閨
枝上流鶯和淚聞、新啼痕間舊啼痕。
一春魚雁無消息、千裡關山勞夢魂。 (雁=鳥)
無一語、對芳尊、安排腸斷到黃昏。
甫能炙得燈兒了、雨打梨花深閉門。
(一說に秦觀作、無名氏作。)
《和訓》
枝上の流鶯 涙に和して聞く、新らたに啼く痕は旧に啼きし痕の間にあり。
一春の魚雁 消息無く、千裡の関山 夢魂を労す。
一語も無く、芳尊に対し、安(いづく)んぞ腸断を排せむや 黄昏に到る。
甫(まさ)に能(よ)く炙(あぶ)り得て灯児(ともし)了(をは)り、雨梨花を打ちて深く門を閉ざせり。
《語釈》
・流鶯:晩春にここかしこと飛び移って乱れ鳴くうぐひす。
・和:動作や比較の対象を示す。他のものととけ合った状態にする。声を合わせる。混ぜ合わせる。
・痕:痕跡(こんせき)、あと。
・一春:この春。春たけなわ。
・魚雁:(比喩表現で)手紙。書簡を送り届ける人。
・消息:知らせ。便り。
・千裡:千里。遠く離れていることにいう。
・關山:郷里。
・勞:はたらかせる。疲れさせる。(あるいは、いたわる。同情の気持ちをもってやさしく接する。)
・尊:樽と通用。酒器、杯。「對芳尊」で、酒を前に、呑みながら。
・安:(疑問・反語を表す語を下に伴って)どうして。なんで。
・排:しりぞける。押しのける。
・腸斷:はらわたが断れるような悲しみ。断腸の思い。
・甫:今しがた…したばかり、やっと。
・炙:あぶる。
・兒
:接尾辞(音を整える)。
・梨花:白い梨の花。ここの「梨花雨」は女の泣き続ける姿を形容する表現であろう。
《詞意》
枝のここかしこに啼く鶯の声を涙と共に聞いています。啼き終わる間に新たな声が重なり、涙のすじもまた新たに流れ付きます。
この春、誰も便りを届けてくれる人は居りません。ただ遠い故郷に思いを馳せて気に病むばかり。
語ることも無くひとり、お酒を飲んでも、どうしてこの悲しみを祓うことが出来ましょう。はやくも夕暮れを迎えました。
今しがた灯火に火をいれました。雨に打たれる梨の花のように泣きつづけ、私の部屋はひっそり閉ざされたままです。
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